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最終更新日 2008/11/03

■ ポリカーボネート製などの医療用具の破損について

(1)概要

 ポリカーポネート樹脂は、その特徴として、耐衝撃性、耐熱性、透明性などが挙げられ、また精密な成形が可能であることから医療用具の分野で広く使用されている。一方、その欠点として耐薬品性及び伸展強度の弱さが挙げられており、全身麻酔剤プロポフォールや免疫抑制剤シクロスポリ
ンにより、当該樹脂製の三方活栓に破損(クラック)が生じたとの報告がされている。
 このことから、脂肪乳剤(又は脂肪乳剤を含有する製剤)、油性成分、界面活性剤及びエタノール等の溶解補助剤を含む注射剤によるポリカーポネート製医療用具の破損発生リスクについて、日本医療器材工業会を中心に検討した結果が取りまとめられた。

(2)試験方法

 ポリカーポネート製品として、使用頻度の高い三方活栓を用い破損の有無を調査した。具体的な試験方法等は以下の通りである。

1)三方活栓の接合方法
 オスコネクターはロック構造のものを使用し、接合の際は三方活栓のメスコネクター部分に薬剤を数滴溜めた状態でロックを締め付け、締め付け強度はトルクゲージにて測定した。

2)締め付け強度
 一般的な締め付け強度と想定される15cN・m及び男性の医療従事者が強く締めた時の強度と推定される40cN・mの2種類を設定した。

3)締め付け回数
以下の2種類の方法を設定した。
@第1法:初回接合後、繰り返しのロック締め付けを行わない方法。
A第2法注):初回接合後、1時間目に破損状況を確認後、三方活栓とオスコネクターの接続を一旦はずし、再度薬剤を数滴溜めて所定の強度で締め付けを行う。その後、観察時間毎に同様の 着脱換作を繰り返す方法。

注)第2法は、実際の臨床現場において、点滴薬剤を交換等する際、事故防止の観点から三方活栓などのコネクター部分を頻回に締め直す操作が行われていることに鑑み、三方活栓のメスコネクター部分に製剤を数滴溜めた状態(常に一定濃度の薬剤がポリカーボネートに接触した状態)で繰り返し締め付けを行う方法。

4)観察時間
 破損の確認は、締め付け1時間後、1日後、2日後、3日後、4日後及び7日後に行った。

5)破損の判別法
 目視により三方活栓のメスコネクター部にひび割れが明らかに確認され、圧力20kPaのエアーによる水没試験の結果、エアーリークが観測されたものを破損とした。

6)試験薬剤
 @脂肪乳剤及び脂肪乳剤含有製剤、A油性成分くポリオキシエチレン硬化ヒマシ油)含有製剤、B界面活性剤(ポリソルベート、プロピレングリコール及びエチレンジアミン)含有製剤、Cアルコール成分くべンジルアルコール)を含む製剤のうち、各成分の添加濃度が高い製剤を選択した。

(3)試験結果

1)脂肪乳剤及び脂肪乳剤含有製剤
 省略
2)油性成分、界面活性剤及び溶解補助剤を含む製剤

(4)考察

 ポリカーボネート樹脂は、その特徴として、耐衝撃性、耐熱性、透明性などが挙げられ、また精密な成形が可能であることから医療用具の分野で汎用されているが、その欠点として耐薬品性、伸展強度の弱さが挙げられている。
 上記の試験結果から、繰り返し締め付けを行わない場合は一部の成分を除き、三方活栓が破損することはな<、また、締め付け圧が通常軽度であればいずれの薬剤に対しても数日間の使用に耐えうることが確認された。

 一方、繰り返し締め付けを行うと、ほとんどの薬剤で2〜3日以上の使用で三方活栓の破損が観察されはじめ、締め付け圧が強いほど破損率が高くなることが示唆された。
 脂肪乳剤については、破損が含有濃度にかかわらず、繰り返し締め付け及びその締め付け強度に依存していた。

 一方、油性成分、界面活性剤及び溶解諦助剤を含む製剤については、脂肪乳剤とほぼ同様の結果であったが、希釈によって三方活栓の破損がなくなるケースも確認され、用法・用量の範囲内において希釈して使用する薬剤については、可能な限り希釈して使用することにより三方活栓の破損率
が著し<軽減できることが期待された。

 今回の試験結果から、破損は繰り返し締め付けを行うという物理的条件と薬剤の接触時間との相乗作用によるものと推察される。
 なお、ポリカーボネート掛脂以外に他のプラスチック製品として、ABS(アクリロニトリル・ブタジェン・スチレン共重合体)樹脂やPMMA(ポリメチルメタクリレート)樹脂を含む医療用具についても同様の破損が考えられることから、注意が必要であると考えられる。


(5) 医療機関への注意事項

 各薬剤に含有される脂肪乳剤、界面活性剤、安定化剤などの成分のポリカーボネート樹脂等の医療用具への影響については、現在各製薬企業において試験を実施中であるが、試験の結果、臨床使用上想定される濃度で当骸医療用具が破損する可能性が明らかになった薬剤については、既に添付文書において注意喚起済みである。また今回の試験結果から、当該成分を含有する薬剤と接触する可能性のあるポリカーボネート樹脂等の医療用具においても、破損の可能性を回避できるものについては、既に当該医療用具の添付文書において破損のリスクについて注意喚起済みである。また、内部構造にポリカーボネート樹脂が使用され、直接に当錬成分を含有する薬剤と接触する可能性がある薬液微量連続注入ポンプ等において、操作上、破損のリスクを回避できない場合には、当該成分を含有する薬剤の使用を禁忌・禁止とする牢どの措置を講じているところであるが、医療機関においても以下の点に注意してポリカーボネート樹脂等の医療用具を使用するよう周知をお願いしたい。

1) 上記成分を含む薬剤の長時間の点滴において「当該成分が接触する三方活栓をはじめとする接続チューブコネクター部分を繰り返し締め付けることは、極力避けること。

2) 上記成分を含む注射剤を交換する際、できるだけコネクター部分を含むルートを同時に交換することが望ましいが、やむを得ず2〜3日以上連続で使用する場合には、頻回に注意して観察すること。さらにコネクター部分などが破損することがあることを念頭において、当該製品の破損による失血、空気混入等の事態に対応できるように準備を怠らないこと。

3) がん化学療法時などにおいて、水分調整のため、希釈せずに高濃度のまま投与が行われる場合があるが、破損の可能性を考慮して、臨床上支障のない範周で希釈して使用することが望ましい。

4) ABS樹脂やPMMA樹脂なども上記成分を含む薬剤の点滴時の繰り返しの締め付けに対しては、ポリカーポネート樹脂と同様に脆弱であることから、これらの製品を含む医療用具を使用する場合にも注意すること。