歯周病の診断と治療のガイドライン |
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| 最終更新日 2008/11/03 | 歯周病の症状と治療法 | ||
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| 歯周病とは | 歯周治療の進め方 | 検査,診断,治療計画の立案 | 患者の依頼(歯周情報提供) |
| 応急処置 | 歯周基本治療 | 炎症に対する処置 | 咬合性外傷に対する処置 |
| 歯周病の指導管理 | 歯周外科手術 | 根分岐部病変の治療 | 歯周病患者の補綴処置 |
| 高齢者と有病者の歯周治療 | メインテナンスと治癒判定後 | ||
平成19年3月に日本歯周病学会から「歯周病の診断と治療の指針2007」が出されましたが、平成20年3月の点数改正において青本にそのまま掲載されるのか不透明な状況です。しかし、それはともかくその要点を記載してありますのでご参考まで。なおこれに関しては医歯薬出版から書籍が販売されているとのことですが、平成19年9月現在、在庫が無く増刷の予定は未定とのことです。 |
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歯周病の診断と治療のガイドライン
以下要約
| ■ ガイドラインの対象: 単純性歯肉炎および成人性歯周炎 ■ 歯周炎の程度 軽度歯周炎: 骨吸収は,歯根の長さの1/3より少なく,ポケットは3-5m程度,根分岐部病変は生じていない。 中等度歯周炎: 骨吸収は,根の長さの1/3-1/2程度,ポケットは4-7mm程度,軽度の根分岐部病変も含む。歯の動揺は軽度に増加する。 重度歯周炎: 骨吸収は,根の長さの1/2以上,ポケットは6mm以上で10mmに及ぶものもある。根分岐部病変2-3度も含む,歯の動揺は著しい。 ■ 歯周治療の基本的考え方: 第一にもっとも重要な原因(初発因子)である“プラーク(歯肉縁上プラークと縁下プラーク)”を歯科医師と患者が協力して取り除くことである。 ■ 治癒とは: 歯周組織が臨床的に健康を回復した状態を「治癒」と呼ぶ。具体的には、歯肉の炎症はなく,歯周ポケットは3mm以下でプロービング時の出血がなく、歯の動揺度は生理的範囲のものを治癒のめやすとする。 軽度の歯周炎: 定期的(年に2回等)な来院による予防処置(X線、検査、ブラッシング指導、PMTC、スケーリング)等が必要。 |
は じ め に
昭和60年の社会保険診療報酬改定の際,進歩した新しい学問理念に合わせた治療体系(いわゆるT型)を導入した。しかし,この新しい治療体系の定着には時間がかかることが予想されたため,T型を推進する一方で,在来型の診療形態(いわゆるU型)を経過措置として存続させた。
10年が経過した現在,この二つの治療システムの共有がいくつかの重要な問題を惹起すると共に,学術の進歩に応じた制度の改善の必要が生じ,また中央社会保険医療協議会歯科小委員会の報告(平成6年6月3日付)においても最優先課題として歯周治療の普及の促進の必要性が指摘された。
# 現在の歯周病のガイドラインは中央社会保険医療協議会歯科小委員会の報告(平成6年6月3日付)に基づいて作成されたものである。
そこで下記の諸点を基本的な前提として新しいガイドラインを作成した。
1T型U型の繁雑さを解消し,時代の経過に伴う学術の進歩、医療現場の実状、社会的要請に対応し,日常の臨床に即した簡明なガイドラインを作成する。
2 このガイドラインは,保険医が対処すべき,歯周病の中で多数を占める単純性歯肉炎および成人性歯周炎を主な対象とし,保険診療における一般的な歯周治療の診断と治療法を記載するものとする。
3 歯周炎は歯の喪失に直結すると共に,患者の心身にわたる健康に影響を与える。また、歯周領域はもとより一般医学検査を含む広範な診査や診断,および治療方針の決定などに科学的な根拠を考察する総合的能力が必要である。歯周治療は長期にわたり,高度,多様性に富み,関連歯科領域をもカバーした熟練した術者の能力も要求される。このため,このガイドラインを参考に,歯科医学的妥当性に基づく診断によって治療が進められることを期待する。
4 症例や術者の状況によっては歯周治療に精通し熟練した他の歯科医師,または歯科医療機関に患者を紹介し,より適切な歯周治療を受けさせることも必要である。
5 学術の進歩および医療環境の変化は急速であり,今後も種々の角度からこのガイドラインの内容について検討することが必要である。
歯周病は成人以降における歯の喪失の主要な原因である。8020の実現のためにも,このガイドラインが有効に活用され,国民の口腔保健の向上に大きな貢献を果たすことを期待するものである。
# とは言うものの、平成6年以来見直しをして改変したという記憶は無い。もう10年以上経つというのにね。
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歯周病の診断と治療のガイドライン
1 歯周病とは
歯周病は歯周疾患とも呼ばれ、歯周組織に原発し,歯周組織を破壊し,その機能を侵す病的状態をいう。ただし、歯周組織を破壊する新生物(悪性腫瘍など)や代謝疾患は含まない。
歯周病の初期症状は歯肉の発赤・腫脹であり,さらに病変が進行すると深部組織に破壊が進み、歯と歯肉の接合部分が破壊され歯周ポケットを形成し,歯根膜の破壊,歯槽骨の吸収が生じ,歯の動揺が顕著となり,歯を喪失することになる。
これらの変化の多くは、初期段階では痛みなどの自覚症状に乏しく,多くの患者はかなり進行してから異常に気がつくことが多い。抜歯される歯の約半数近くは歯周病が原因である。
歯周病のほとんどは,プラーク中の細菌が原因(初発因子)となって生じた炎症性疾患であり,歯肉炎と歯周炎に大別される。歯周病にはこの他にプラークと関係なく、強い咬合力によって引き起こされた咬合性外傷が含まれる。
プラークは歯・歯肉・修復物・補綴物などに付着する多数の細菌から構成されている。なお、これらのプラークを構成する細菌の中で,特に歯周病変に強く関与していると考えられる細菌を歯周病関連菌と呼んでいる。
個々の歯や患者間における歯周炎の発症と進行の程度の違いは,原因因子である歯周病関連菌の質と量、それらの作用時間,さらには患者側(ホスト側)の要因としての抵抗性あるいは治癒カとの相対的バランスによると考えられている。
(1) 歯肉炎の特徴
歯肉炎は歯肉にのみ炎症病変が生じたもので,歯根膜や歯槽骨は破壊されておらず、歯周炎の前段階といえるものである。しかし,歯肉炎がすべて歯周炎に進行するわけではなく、歯肉炎のまま長期間維持されるものもある。具体的な特徴は以下のとおりである。
(a)初発因子はプラークである
口腔清掃を中止してプラークが付着すると2・3日で肉眼でも歯肉炎の発生を見ることができる。
(b)炎症は歯肉に限局している
歯根膜や歯槽骨には炎症が及んでいない。しかし、歯肉炎を放置すると炎症が歯根股や歯槽骨に及び、歯周炎に進行する危険性が高い。
(c)仮性ポケット(歯肉ポケット)が形成されているが,アタッチメントロスはない
歯肉が歯と付着する位置はほとんど変わらずに、歯肉が炎症により腫脹したり増殖することによって仮性ポケット(歯肉ポケット)が形成される。臨床的には,ポケットの底部はセメントエナメル境より歯冠側に位置する。すなわち,歯周組織が歯と付着し支持している量(これをアタッチメントと呼んでいる)は減少していない。
(d)局所の修飾因子(プラークの除去を困難にする因子など)によって増悪する
口腔清掃を阻害したり表面が粗造でプラークを付着・増加させる因子、例えば歯石,不良補綴物,歯列不正,口呼吸などによって増悪する。
(e)外傷性咬合(早期接触・プラキシズム・側方庄など)によって増悪することはない
外傷性咬合によって病変が生じるのは歯根膜と歯槽骨であり,歯肉は直接影響を受けない。したがって,歯肉炎が外傷性咬合によって増悪することはない。
(f)全身性の修飾因子が関与しているものもある
最初はプラークによって引き起こされるが,全身性因子あるいは特殊な局所因子に強く修銑されている歯肉炎がある。これらは通常関与する修飾因子の名がつけられており、妊娠性歯肉炎・フェニトイン(ダイランチン)性歯肉炎,白血病性歯肉炎などがある。しかし,これらは妊娠のため,あるいは フェニトイン(抗てんかん剤)服用のために歯肉炎が起こるのではなく、プラークによって引き起こされた歯肉炎が,妊娠や薬の服用により修飾されて増悪しているのである。プラークによる歯肉炎が存在しなければ,このような歯肉炎は生じてこない。
(g)プラークを除去することにより改善する
口腔清掃の徹底により初発因子であるプラークを取り除くことにより,著しく改善する。さらに修飾因子を取り除くことにより,臨床的に正常な状態に回復する。
(h)硬い歯ブラシや食物,義歯,薬物などプラーク以外の因子により歯肉が傷つくことがある
これらは歯肉外傷とも呼ばれ,例外的な歯肉疾患である。
(2) 歯周炎の特徴
歯周炎は歯肉に初発した炎症が,歯根膜や歯槽骨など深部歯周組織に及んだものである。歯肉炎が歯周炎に進行するには,通常,ある程度の量のプラークが長期間にわたり存在することが必要である。これには,プラークを増加させたり,プラークの除去を困難にする因子,すなわち局所修飾因子が大きく関与する。
歯周炎が進行する速度は,比較的ゆっくりで,数年単位で進行する。しかし,早期接触などにより異常に強い咬合力(外傷性咬合)が加わって咬合性外傷を合併したり,特珠な細菌に感染したりすると,破壊は急速に進行する。
さらに,全身性因子として生体の防御反応の強弱も影響する。例えば,糖尿病による抵抗力の低下(白血球の機能低下など)が歯周炎の進行を速める。
具体的な特徴は以下のとおりである。
(a)歯肉炎が歯周炎に進行し,歯根膜・歯槽骨が破壊される
プラークによって生産される有害な刺激物質の侵入が生体の防御力を上回り,歯肉の炎症性破壊が探部歯周組織(歯根膜や歯槽骨)に及んでいる。プラークが持続的に歯周組織に作用し,歯根膜線維の破壊・歯槽骨の吸収が生じる。
(b) アタッチメントロスが生じ,真性ポケット(歯周ポケット)が形成される歯肉と歯との付着(結合)機構が破壊きれ、歯根に付着する歯周組織の量が減少(アタッチメントロス)する。歯肉の接合上皮(付着上皮)はセメントエナメル境よりも根尖側に移動し,歯肉は歯根から剥離して真性ポケットが形成きれる。臨床的には,ポケット底部がセメントエナメル境より根尖側に位置する。
(c) 歯周ポケットが深くなると歯肉縁下の細菌が増殖し,炎症を持続し進行させる
ポケット内は細菌が増殖しやすい環境であり,多量の有害な細菌の産生物がポケット上皮を通過して歯肉内へ入り込む。さらに,炎症が高度になると細菌自体が歯肉結合組織の内へ侵入する。このような状態から、歯周炎は歯周病関連菌の感染症であるともいえる。とくにPorphyromonas
gingivalis(P,g.)やActinobacillus actinomycetemcomitans(A,a,)などは有害な酵素や内毒素を持ち,急速に歯周組織を破壊する。
(d) 局所の修飾因子(プラークの除去を困難にする因子)が存在すると増悪しやすい
口腔清掃を困難にするプラーク増加因子(歯石・歯列不正・小帯異常・不良補綴物など)が存在すると歯周炎は発病し増悪する。ひとたびポケットが形成されると,ポケット内部は患者が自分で清掃できないためプラーク増加因子となり,さらに歯周炎を進行させる。
# 従って、病状の進行によってはブラッシング指導による自己管理の徹底(プラークの除去)に加えて、PMTCや歯周基本治療が必要となる。
(e) 咬合性外傷が合併すると急速に増悪する
外傷性咬合(早期接触,強い側方庄,プラキシズムなど)により生じる咬合性外傷が,歯周炎と合併すると歯周炎は急速に進行する。臨床的には垂直性骨吸収、骨縁下ポケットが形成されやすい。したがって、外傷性咬合は歯周炎の重要な修飾因子の1つと考えることができる。
(f) 全身性因子は修飾因子として働く
細菌感染に対する抵抗力を低下きせる全身性疾患(糖尿病や血液疾患特殊な遺伝性疾患など)や免疫力の低下は,細菌に対する抵抗力を弱め,歯周炎を進行させる。
全身因子では宿主の防御機能を損う遺伝性要因も指摘されており,要因の一部は解明されている。
(g) 部位特異性が著明である
同じ患者の口腔内でも,部位により歯周炎の進行度に大きな差異がみられる。これは前述した局所の修飾因子や歯の解剖学的特徴,増殖している細菌の質(種類)などによる。
(h) 歯周炎には慢性期と活動期がある
歯周炎は慢性疾患といわれるが,その進行は常に一定速度で進むのではなく,活動期すなわち急速に進行する時期がある(活動期か慢性期かを1回の検査で診断する方法はまだ確立されておらず,通常,アタッチメントロスや歯槽骨の吸収が短期間で急速に進行した場合を活動期と呼んでいる。しかし,前述した(1)・(7)の歯周炎の特徴を考慮し,ポケットからの排膿と出血,ポケット内細菌叢,根面の状態,咬合性外傷,全身状態などを調べることにより活動期を推定することが可能である)。
# いわば「活火山」と「休火山」のようなものであろうか。
(i) 歯周炎が重度になると悪循環が生じ,さらに急速に進行しやすい
ポケットが深くなると毒性の強い嫌気性のグラム陰性菌が増加する。さらに,骨吸収などにより支持カが低下すると2次性咬合性外傷が生じ炎症と合併して進行を早める。
(j) 歯肉膿瘍や歯周膿瘍を形成することがある
一般に歯周炎の急性発作とも言われるもので,細菌が歯肉や歯周組織の深部に侵入増殖し膿瘍を形成する。通常,歯周組織の防御機構が低下している場合,例えば,ポケットが探くて咬合性外傷を合併したり,風邪などにより全身状態の低下した時,歯肉縁下のスケーリング・ルートプレーニングが不十分な場合などに生じやすい。
(k) 原因の除去により歯周炎は改善する
軽度の歯周炎は基本的な原因除去療法で健康を回復することが可能である。一方、重度の歯周炎は治療が困難となり、複雑な治療を必要とし、しかも完全な回復は不可能な場合が多い。現在の治療技術では失われた歯周組織の再生は一般に難しい。
しかし,完全な健康回復や再生が不可能(深いポケットが一部に残存する場合など)でも,患者の熱心なプラークコントロールと歯科医師のメインテナンスにより,歯を保存し機能させることは十分可能である。
# つまり定期的な指導とPMTCや歯周基本治療が重要だということである。
(l) 再発の危険性が高く、メインテナンスが不可欠である
初発因子(原因)であるプラークが口腔内に常に存在するため、再発の危険性が高く,治療により回復した健康を維持するためには、患者を定期的にリコールしてメインテナンスを行う必要がある。
# リコールによるメンテナンスの必要性を説いている。ここで重要なのは「再発」という文言である。つまりメンテナンスは再発防止の為に行うということで、口腔内の大部分は治癒したが一部に病変が残っている場合の対処に加え、「全顎治癒」と判断された後の対処もメンテナンスということになる。しかし、メンテナンス時に必要な検査をして歯周病の再発が認められず、歯周基本治療などの必要を認めない場合には再度治癒という結果になるが、これを繰り返せば「歯周治療の実態の無いX線や検査」と判断されかねず、このへんはどうすればいいのか対処に困る所だ。
(3) 咬合性外傷の特徴
咬合性外傷は,外傷性咬合(過度な咬合力)によって引き起こされた歯周組織の外傷であり,プラークによって引き起こされる歯肉炎及び歯周炎とは異なった歯周病変である。咬合性外傷を引き起こす原因となる咬合を外傷性咬合と呼び、その代表は早期接触,プラキシズム・側方庄・舌と口唇の悪習癖・食片圧入などである。
(4) 歯周治療の多様性と再発の危険性
歯周病は同じような症状でもその病態は複雑なことが多い。例えば,同じ深さのポケットでもポケット内の細菌の質や量が異なり、また前歯か臼歯か、隣接面か頬舌面かによって,また修飾因子の種類や有無などによって処置法が異なることが多い。さらに,治療に対する反応も患者間や部位によって異なることが多く、処置を行った前と後の比較検討が重要である。
歯周治療では,患者の疾病や治療に対する認識と協力程度、口腔の健康への価値観が大きく影響する。
歯周病関連菌は,もともとは口腔に存在する菌ではなく,何等かの機序で患者の口腔内に常在するようになる。一旦,口腔内に常在するようになると,その菌数を減らすことは出来ても,まったくゼロにすることは極めて困難である。増殖する環境(歯肉縁上プラークが増えたり,歯周ポケットが深い状態,あるいはこれらの歯周病関連菌を増殖させうる生体例の要因の変化など)があれば,再度生体に為害性を与える数以上に容易に増殖する。これが歯周病が再発しやすい理由である。
(5) 修飾因子の中でも影響の大きい外傷性咬合
歯周病の修飾因子の中でも影響が強い因子は,外傷性咬合である。すでに歯周炎に罹患し歯を支える支持組織の量が減っている歯は,生理的な範囲の咬合力ですら外傷的に働くことがある。プラキシズムを有する患者,早期接触や咬頭干渉のある歯,鉤歯や支台歯などには十分な注意が必要である。
(6) 全身的な修飾因子
歯周組織は,生体の一部であり全身的な修飾因子の影響を受ける。代表的なものは,妊娠時の内分泌の変化による歯肉の脈管系の変化と,ポケット内細菌叢の変化によって起きる「妊娠性歯肉炎」である。現在では「妊娠時の歯肉炎」とも呼ばれるが,これは妊娠が直接の原因ではなく,妊娠により修飾された歯肉炎であるという理由からである。糖尿病に併発する歯周炎も,糖尿病が原因として歯周炎を惹起させるのではなく,糖尿病による免疫系機能障害,末梢血管循環障害などが,歯周炎の病態を修飾するものである。
このような全身疾患を有すると思われる歯周病患者には,聞き取り調査を十分行うとともに,症例によっては医師の診察を指示する必要がある。全身疾患が十分管理された状態で歯周治療を行うと,より効果の高い治療効果が期待できる。
しかし,全身疾患の中にはきわめて影響力が強いものも存在するので,そのような患者は早期に専門性の高い医療機関に依頼すべきである。
(7) 歯周病の分類
歯周病の分類は研究の進歩を反映して変わっている。ここでは総合的に見た歯周病の分類を以下に示す。これらのうち,歯肉炎で最も多いものは単純性歯肉炎であり,歯周炎のうち最も多いのは慢性歯周炎(成人性歯周炎)である。
(a) 歯肉炎
局所因子(細菌とその産生物を含む)の刺激に対する歯肉の炎症性反応で,炎症は歯肉に限局し歯根膜や歯槽骨に病変は生じていない。ポケットは仮性ポケット(歯肉ポケット)の状態である。
@ 単純性歯肉炎
局所因子(プラーク)により歯肉に炎症が生じたもの(全身性因子の関与は少ない)。ほとんどの歯肉炎がこれに分類される(さらに急性と慢性に分類される)。
A 複雑性歯肉炎
全身性あるいは局所の特殊因子が修飾しているもの。例えば,妊娠性歯肉炎,ニフェジピン性歯肉炎,フェニトイン(ダイランチン)性歯肉炎,急性壊死性潰瘍性歯肉炎,慢性剥離性歯肉炎などである。
B 歯肉外傷
物理的なカ(歯ブラシや硬い食物)や薬物,高温,医原性因子などが原因で歯肉が損傷したもの
(参考)歯肉退縮:何らかの原因で歯肉がセメントエナメル境より根尖側へ退縮し,炎症がないもの
(b) 歯周炎
炎症性破壊が歯肉から深部の歯根膜や歯槽骨に及んだもので,真性ポケット形成,上皮付着の根尖側移動(アタッチメントロス)が生じている。
@ 慢性歯周炎または成人性歯周炎
局所因子(プラーク)による歯周組織の反応が全身性因子によってとくに修飾されていない歯周炎で,慢性に進行する。成人にみられる歯周炎のほとんどはこれに属する。しかし咬合性外傷,特殊なプラーク増加因子や全身性疾患などの修飾因子が加わると急速に進行する可能性がある。
歯周組織の破壊の程度すなわち歯槽骨の吸収程度,歯周ポケットの探さ,根分岐部病変,歯の動揺度などを総合的に考慮してさらに次の3段階に分類される。
(ア) 軽度歯周炎
骨吸収は,歯根の長さの1/3より少なく,ポケットは3-5m程度,根分岐部病変は生じていない。
(イ) 中等度歯周炎
骨吸収は,根の長さの1/3-1/2程度,ポケットは4-7mm程度,軽度の根分岐部病変も含む。歯の動揺は軽度に増加する。
(ウ) 重度歯周炎
骨吸収は,根の長さの1/2以上,ポケットは6mm以上で10mmに及ぶものもある。根分岐部病変2-3度も含む,歯の動揺は著しい。
A 急速性(破壊性)歯周炎または複雑性歯周炎
通常の局所因子のほかに,特殊な局所因子(p.g.菌やA.a.菌など組織破壊力の強い細菌の感染や強いプラキシズム習癖など)及び全身性因子(白血球の機能低下など)に強く修飾されていると思われる歯周炎で,急速に進行し重度な歯周炎となる。
また,全身因子では宿主の防御機能を損う遺伝的要因があげられるが,その要因は極めて多岐にわたっており,全要因を検査,診断することは難しい。しかし,要因の一部は解明されているので,検査によって明確にすることができる。
(ア) 若年性歯周炎
思春期頃に発症し急速に進行する。原因は明確でないが,A・acti・nomycetemcomitans菌が関与している可能性が高い。プラークや歯石は少ない。わが国ではまれな疾患である。さらに局所型と広汎型に分類されている。
●局所型: 第1大臼歯と中切歯に発生し,骨吸収著明。
●広汎型: 全顎的に生じたもの。
(参考) なおPageは12歳未満(前思春期)の小児の混合歯列にみられる歯周炎を前思春期性歯周炎と呼んで区別しているが,これはきわめてまれな疾患である。
(イ) 急速進行性歯周炎
20-30歳にみられる重度な歯周炎で急速に進行したと考えられる。原因は明確でないがP.gingivalis菌が関与している可能性が高いと考えられている。早期接触やプラキシズムなどによる咬合性外傷を合併していることが多い。
(ウ) 特殊性歯周炎
遺伝性疾患など特殊な全身性因子により宿主の反応に異常があり,急速に進行するもの。症例はきわめてまれである。パピヨン・ルフェーブル症候群,周期性好中球減少症,ダウン症候群,前若年性歯周炎などがある。
(c) 咬合性外傷
異常に強い咬合力や側方庄によって歯根膜や歯槽骨に生じる外傷性の病変である。歯根膜の庄迫部の変性壊死や歯槽骨の吸収などが生じる。歯肉に炎症は生じない。歯周炎と合併すると急速に歯周炎を進行させる。
歯周病の総合的分類の纏め
「今日の歯周病治療」(日本歯科医師会雑誌1995VOL.47No.11)より
(1) 歯肉炎
@ 単純性歯肉炎 A 複雑性歯肉炎 B 歯肉外傷
(2) 歯周炎
@ 慢性歯周炎(成人性歯周炎) A 急速性歯周炎(若年性歯周炎 急速進行性歯周炎 特殊性歯周炎)
(3) 咬合性外傷
歯周病の治療の基本は,歯周病を引き起こし増悪させる「原因の除去」である。前述したように歯周病のほとんどはプラークを主因とした歯肉炎と歯周炎であり,これらを治療する基本は,まず第一にもっとも重要な原因(初発因子)である“プラーク(歯肉縁上プラークと縁下プラーク)”を歯科医師と患者が協力して取り除くことである。このためには歯科医師が患者に歯周病の予防と治療の重要性を認識させ,適切な口腔清掃法を指導し徹底させることがもっとも大切である。
# まずは歯周病に対する説明と適切なブラッシング指導を繰り返し行うことが重要!!
次に大切なのは修飾因子の除去である。プラークを増加させたり取り除きにくくするプラーク増加因子(歯石や歯周ポケットなど)を除去したり改善することである。さらに大切なのは,歯周組織に咬合性外傷を引き起こし歯周炎を増悪させる外傷性咬合(外傷性の修飾因子)を除去することである。
これらの処置により歯周病の症状は改善してくるが,可能ならば失われた歯周組織を再生させる。一方,咬合が乱れたり失われている場合は,安定した咬合を確立し快適な咬合機能を回復させる。さらにメインテナンスに力を入れ,回復した口腔の健康を長期維持するようにする。
これらの歯周病の原因の除去を行わず,歯肉が炎症を起こしているからといって単に抗生物質や抗炎症剤を投与するだけであったり,腫脹しているからといって歯肉を切開して排膿したり,歯が動揺するからといって固定するだけの治療は適切ではない。
すなわち,これらの治療法は原因であるプラークを根本的に取り除くことにはならず”対症療法”と呼ばれる。対症療法では歯周病は決して治癒しないし,一時的に細菌が減少して治癒したようにみえても,短期間のうちにプラークが増加し再発してくる。
一方,全身性因子は初発因子ではなく修飾因子であることから,全身性因子が存在していても初発因子であるプラークを十分に取り除くことにより歯周炎は改善する。しかし,糖尿病や血液疾患など全身性因子がある場合は,わずかな局所刺激物(プラーク)に対しても強い炎症が生じやすいので局所因子の除去を徹底させ,その上で全身性因子の改善を図ることが大切である。
(2) 歯周治療の進め方の原則
歯周治療を合理的に行い良い結果を得るには,歯周病の原因と成り立ち及び歯周治療の基本的な考え方を十分に理解し必要な検査を行い,その結果をもとに患者の希望や全身状態等をも考慮して,適切な「治療計画」を立て患者に説明し承諾を得て,それに沿って治療を進めていくことが大切である。歯周治療の流れを図2に示す。 (図 略)
# つまり歯科医が適切な治療計画だと判断しても患者の同意が無ければ先には進めない。例えば歯周外科処置などをどう説明して同意を取るか、非常に難しい問題である。
(3) 歯周病の治癒と病状安定
歯周病は初発因子(原因)である細菌が口腔内に常に存在するため,きわめて再発しやすい疾患であり,積極的な治療終了後も長期間メインテナンスを行うことが重要である。したがって,重度な歯周病の完全な治癒(治療終了)は難しいが,歯周組織が臨床的に健康を回復した状態を「治癒」と呼ぶ。
歯周病の「治癒」の判定時期は,歯周病の進行状態によって大きく変わってくる。例えば,単純性歯肉炎や軽度の歯周炎などは,歯周基本治療により健康を回復し、その後に行う歯周基本検査2・3や歯周精密検査2によって治癒と判定できる。その後は健康な人と同様に定期的な予防処置(治癒後の再発防止)を行えばよい(例えば1年2回の検診と口腔清掃,スケーリングなど)。
# 定期的(年に2回等)な来院による予防処置(X線、検査、ブラッシング指導、PMTC、スケーリング)等の必要性。
一方,中程度から重度な歯周炎では基本治療のみでは十分に健康が回復せず,歯周外科手術,固定,補綴処置などを必要とすることが多い。したがって、これらの治療が終了したと判定した時点で,歯周精密検査3を行い治癒状態を評価する。この評価により歯周組織の健康がほほ完全に回復した場合は,「治癒」と判定する。
一方,歯周精密検査3の結果,歯周組織の多くの部分は健康となったが,一部に深い歯周ポケットや根分岐部病変が残在しており、その部位の歯周組織は健康を回復していないが,病変の進行は停止している状態を「病状安定」と判定する。この場合メインテナンスが重要となる。
(a)治 癒
歯周組織が臨床的に健康を回復した状態をいい,歯周治療は終了となる。
内容的には歯肉の炎症はなく,歯周ポケットは3mm以下(プロービング時の出血はない),歯の動揺度は生理的範囲のものを治癒のめやすとする。
(b)病状安定
歯周組織の多くの部分は健康を回復したが,一部分に病変の進行が停止し症状が安定しているとみなされる深い歯周ポケットや,根分岐部病変の残存歯の病的動揺が認められる状態をいう。この中には全身疾患や高齢など患者の状態により外科的治療が行えない場合も含まれ,比較的短期間にリコールし,メインテナンスを行う必要がある。このほか、わずかなプラークコントロールの低下でも再発しやすいと判定される場合、プラキシズムや舌の習癖が強い場合,および高度な骨吸収(支持量の減少)のため生理的な咬合力でも咬合性外傷が生じやすい場合や,尿病など全身性の修飾因子がある場合も「病状安定」と判定して,定期的なリコールとメインテナンスが必要である。
3 歯周病の検査,診断,治療計画の立案
検査は,正しい診断と適切な治療計画を立てる基礎となる情報を得る目的で行う。従来,多くの検査項目が列挙きれているが、症例に応じて必要な検査を系統的に行い,検査結果を分析して治療計画の立案や修正に生かすことが大切である。そのためには,術者が各検査の意義を明確に把握し、まず歯周病の進行状態を検査し,それに応じて必要な原因因子の検査も行う。
検査結果は,カルテやチャートに記録し,治療計画を立てやすくするとともに再評価時に比較検討できるようにする。
歯周基本検査は,歯周病の基本的検査を行い,歯周病の進行程度や原因をおおまかに把握し,治療方針を決めるために行う。
歯周精密検査は,歯周病の精密な検査を行うことによって,より正確に病状を把握し適切な治療方針を決めるために行う。
エックス線写真による検査は,歯根膜,歯槽骨や歯根などの病変を検査する手段として有効である。したがって,歯周治療のエックス線写真による検査は,患者の被爆量を考慮しながら必要と思われる時期に行う。
(1) 初 診
患者が来院した主な理由(主訴)を聞く。歯科治療を行う上で配慮すべき全身性疾患に関し,問診と視診を行い患者の全身の健康状態を把握する。主訴に関連する口腔内既往歴を聞くとともに口腔内の状態を調べる。
(2) 歯周治療への導入
患者が来院した理由 とくに歯周治療に対し希望する事項を聞く。これは患者とのコミュニケーションをはかり,治療を進めてゆく上で大切である。主訴が歯周病の場合には,歯周病を治したいという強い気持ちで来院してくるため,程度の差こそあれ,患者は歯周病に対する不安や自覚症状を持っている。主訴が歯周病以外の場合は,歯周病に対する自覚症状が少ないため,患者が歯周病に気づかない場合や,気づいてもあまり問題にしない場合が多い。このような場合には,歯周病以外の主訴とは別に並行して歯周病の病態を認識させてゆく。
(3) 歯周基本検査1(歯周治療の流れ 図2を参照)
(a) プラークの付着状態
歯周病の原因に対する検査として重要である。各歯のプラークの付着の有無を視診,探針による触診などにより検査する。
(b) 歯周ポケット
各歯の歯周ポケットの探さを調べ深い部位を記録する(1歯1カ所以上)。
(c)歯の動揺度
Mi11erの歯の動揺度の分類を基本に行う。
(4) 歯周精密検査1(歯周治療の流れ 図2を参照)
歯周精密検査1は以下の項目について行う。
(a)歯肉の炎症
歯肉炎指数(GI),プロービング時の出血(BOP)などで評価する。
(b)歯周ポケット
1歯6点計測を基本とし,必要に応じて測定点を増加させる。
(c)口腔清掃状態(プラークコントロールの状態)
プラークを染め出し,各種のプラークチャートを用い,プラークの付着状態を記入し評価する。
(d)歯の動揺度
Millerの歯の動揺度の分類を基本に行う。
(e)咬 合
歯列全体の咬合関係(不正咬合の有無など)や外傷性咬合などを調べる。
(f)根分岐部病変
多根歯を対象に,エックス線写真を参考にして根分岐部用探針などを用いて調べ,進行度を3段階(Lindheの分類)または4段階(Glickmanの分類)で分類する。
(g)プラーク増加因子
プラークを増加させる因子,歯石,辺縁不適合な充填,補綴物や歯肉の形態異常などについて検査する。
(5) 歯周基本検査1,歯周精密検査1の追加検査
この検査は,より正確に歯周病の進行程度や原因を把握するために行う検査で,必要に応じて歯周基本検査1,歯周精密検査1,に加えて行う。
(a) 口腔内カラー写真
口腔内のカラー写真撮影は,文章や数値で表現するのが難しい口腔内の状態(とくに歯肉や咬合の状態など)を正確に記録することが可能である。さらに初診時の口腔内写真と比較することにより,治療による変化を客観的に評価できる。他の検査結果と併用することにより総合的な診断や評価が可能であり,治療計画をより適切な治療計画へと修正するのにきわめて有用である。
さらに,患者数育及びモチベーションにも有効である。患者の口腔内写真を本人に見せることによって自分では認識していなかった病態や原因を理解させ,治療方針を説明することによって,治療への協力を促す。また,治療による歯周組織の改善を自覚させることによって,さらに積極性を促すこと ができ,ひいてはメインテナンスを円滑に行うことが可能となる。
口腔内カラー写真の検査は,正面観,左側および右側臼歯部頬側面観,口蓋側および舌側咬合面観の撮影を基本とする。
(b)その他の検査
若年性歯周炎や急速進行性歯周炎などが疑われる場合には,その他の必要な検査を行うことがある。
(6) 診断と治療計画の立案
歯周基本検査や歯周精密検査及びエックス線検査など,必要に応じて行った検査結果をもとに診断を行う。
治療計画はこの診断結果に基づき,必要な処置や予後を推定し,さらに患者の主訴や希望,術者の技術力などを総合し,最も適した治療内容と治療順序を立案する。治療計画を立て治療を行うことにより,合理的に治療を進めることが可能となる。
治療計画が決定したならば,治療の初期の段階から協力を得るべく,患者には自分の疾患がどのような病気か,どのような治療を行うのか,治療計画をわかりやすく説明することが必要である。
(7) 歯周基本検査2と3(歯周治療の流れ 図2を参照)
歯周基本検査2は歯周基本治療であるプラークコントロールとスケーリングを行った後に,その治療効果を調べる目的で行う。検査内容は歯周基本検査1と同じであり,以前に行った検査結果と比較検討することによって治療に対する歯周組織の変化を知ることができる。治療により改善し健康を回復した場合は治癒と判定する。一方,十分改善しなかった場合にはその部位に対して,さらに基本治療としてスケーリング・ルートプレーニングまたは歯周ポケット掻爬(盲嚢掻爬)などを行う。
これらの治療が終了したら,歯周基本検査3を行い比較検討する。検査内容は,歯周基本検査1と同様である。検査結果をもとに治癒か,さらに,再度スケーリング・ルートプレーニングまたは歯周ポケット掻爬(盲嚢掻爬)が必要であるかを判定し,必要な場合はこれらの処置を行う。
なお,歯周基本検査2と3を行った結果,歯周外科手術が必要と考えられる場合には,歯周精密検査2を行って詳細に検査し,治療計画を修正して歯周外科手術を行う。
(8) 歯周精密検査2と治療計画の修正
歯周精密検査2は,歯周基本治療が終了した時に行う検査である。歯周治療では,最初に歯周基本検査,歯周精密検査を行い,その結果をもとに治療計画をたて,歯周基本治療を行うが,基本治療が一心終了したと判定した時に、歯周精密検査2を行う。すなわち基本治療終了後の歯周組織と咬合機能状態を正確に把握し,最初の基本検査,精密検査の結果と比較検討することにより,基本治療の効果,治療の成否,治療に対する反応などを再評価することができる。さらに,改善が不十分な部分を明確にすることにより,次に行う治療の内容を検討し治療計画を修正する。
(a)歯周精密検査2
本検査は,歯周精密検査1と原則的に同じ内容で行い,両者を比較検討しやすい検査用紙を用いることにより,歯周治療に対する患者の反応と正確な病状(病態)とを知り,予後の判定と,治療計画の修正に役立てる。さらに,病状が進行する危険性の高い部位や診断が難しい部位は,必要に応じてより精密な検査を行う(分岐部病変のある歯は1根ごとにポケットの6点計測等を行う)。これらの結果をもとに治癒しない原因を検討し,今後の治療(歯周外科手術,根分岐部病変の処置,固定など)をどのような順序でどのように進めていくかを考慮して治療計画をより適切なものに修正し,患者に説明して(必要に応じて検査結果を示す),理解と承諾を得る。
なお,歯周外科手術を行うにはプラークチャートの指数が少なくとも20%程度を維持でき,歯肉の発赤など肉眼的な炎症がないことが望ましい。
(b)歯周基本検査,歯周精密検査の追加検査
@ 口腔内カラー写真
歯周基本治療を行う前の写真と比較することにより,基本治療による改善状態と改善不十分な部分を確実に認識でき,治療計画の修正に有効である。さらに患者に示すことによりモチベーションの強化をはかるとともに治療内容を理解させ,治療に協力してもらうことに有効である。
A プラークの細菌学的検査(歯肉縁下プラークの検査)
歯肉縁下プラークを採取し,特に為害性が強いと考えられている細菌,例えば・Porphyromonas
gingivalisやActinobacillus actinomycetemcomitansなどを中心に調べる。現在DNAプロープ法などがこの検査に応用されている。一方,チェアサイドで行える酵素判走法は細菌種を同定する方法ではないが,簡便法として用いることができる。
B 歯周ポケット滲出液の検査
滲出液の量を測定したり,滲出液中の酵素やサイトカインを検査する。
C 歯の動揺度
Millerの歯の動揺度の分類を基本に行う。
D その他の検査
若年性歯周炎や急速進行性歯周炎などが疑われる場合には,その他の必要な検査を行う。
なお,これらの検査項目の中には現段階では保険適用外のものがある。
(9) 部分的再評価
これは歯周外科手術を行った後,手術部位に対してのみ再び検査を行い,治癒の状態を評価する検査である。手術後の創傷治癒には,通常2-4週間以上必要とするので,この部分的再評価は,原則として手術後2-4週以降に行う。
部分的再評価の内容は,歯肉の炎症状態,歯周ポケットの探さ(1歯6点計測)の検査が中心である。
# あれっ?部分的再評価検査って無くなったんじゃないですか。とすると診療点数の構成自体が「歯周病のガイドライン」から逸脱するという結果になりますがどうなんでしょう???
(10) 歯周精密検査3
歯周精密検査3は歯周基本治療や歯周外科手術などの治療が終了し、部分的再評価の結果を含めて口腔全体として歯周組織が改善したと考えられた時に行う精密検査である。検査の内容は歯周精密検査2と同じ内容である。検査結果は精密検査1,2の結果とも比較し,治療による改善状態やさらなる処置の必要性を検討し,健康を回復した歯周病の治癒か,あるいは病状安定かを判定する。治癒と判定した場合は治療終了となり,患者には再発予防に関する注意を十分に与える。
一方,病状安定(まだ完全に健康を回復していない状態)ではメインテナンスへ移行する。
4 患者の依頼(歯周情報提供)
現在,医療の高度化はますます進んでおり,専門性の高い医療機関への診療情報提供(依頼)が行われている。歯周治療においても検査,処置,手術などの進歩,患者の全身状態や要望の多様性などを考慮すると,症例によっては専門性の高い医療機関へ情報を提供し,患者を依頼する必要がある。また,患者が重度の歯周炎患者で治療に専門的知識や高度な治療技術が必要な場合は,歯周治療に精通し,熟練した歯科医師へ依頼することが望ましい。
患者の依頼(歯周情報提供)の歯周治療のどの時期,どの段階で行ってもよい。すなわち,初診の検査を行った段階,歯周基本検査1,歯周精密検査1を行った段階,あるいは歯周基本検査2,3や歯周精密検査2を行った段階など,どの時期でも行える。
5 応急処置
患者との信頼関係を深くするためには,患者が疼痛など急性症状を訴える場合,咀嚼,発音などの口腔機能が著しく障害をうけることや審美的に異常を患者が訴える場合には,応急処置としてまずこれらの改善をはかり,その後に歯周治療を行っていく必要がある。
疼痛を伴う歯肉の急性症状には歯髄組織由来と歯周組織由来のものがあり,両者を鑑別して適切な処置を行う必要がある。
歯周治療を進めている間に生じる歯周病と関連の深い応急処置を必要とする症状には,急性歯肉膿瘍,急性歯周膿瘍,歯の著しい動揺,強い知覚過敏などがあ る。
全身的因子によると思われる異常出血などの場合には,専門性の高い医療機関に相談する必要がある。
6 歯周基本治療
歯周基本治療は,今まで多くの場合歯周初期治療と呼ばれていたが,歯周病の初期のものに対してのみ行うものと誤解されがちであった。このため歯周基本治療と言い改めた。
歯周基本治療は,大部分の歯周病が局所における病因であるプラークによって発症し進行するという事実と,病因を排除することが治療の欠かせない第一歩であるという治療学の原則から,進行程度を問わず治療開始当初に必ず行う基本的な治療である。この歯周基本治療の成否は,歯周治療全体の成否につながる重要なものである。
歯周基本治療として行う処置としては後述するように数々のものがある。なかでも重要なものはモチベーションである。モチベーションとは一般に「動機づけ」と訳され,習慣や日常行動を変容し,持続させるための動機を与える教育心理学用語である。モチベーションは患者の歯周病変の自覚の有無に関わらず,歯周治療を始める際に歯周病の原因,病態,治療の内容や期間などを患者の病態や歯周病への理解の程度に合わせて個別に説明することによって,患者のコンプライアンス(一般には治療への協力程度)を高めることに役立つ。
モチベーションは歯周病のような慢性疾患の様相を呈し,原則的に口腔単位の治療が行われ,かつ,長期に治療が継続する疾病には極めて重要な治療ステップである。モチベーションは一回限りで効果を有するものではなく,あらゆる機会をとらえて強化しなければならない。なかでも,患者と歯科医師との最初の出会いの時期は,お互いに共有する理解がないだけに,モチベーションが重要な役割を果す。しかし,患者の期待とかけ離れた教育は拒絶されることもあるので,患者の期待と理解を把握しながらモチベーションを行う。
歯周基本治療に属する処置は,大きく分けて歯肉の炎症に対する処置と咬合性外傷に村する処置に分けられる。これらのものは,治療期間中一回のみで目的を逢するものもあるが,一回のみでは目的を達せず検査結果によっては再度行うもの,長い治療期間中症状の変化によって随時行うもの,治療期間中定期的に行うものなどがある。
(1) 炎症に対する処置
(1) プラークコントロール (2) スケーリング,スケーリング・ルートプレーニング
(3) 歯周ポケット掻爬(盲嚢掻爬) (4) 局所の修飾因子(プラークの除去を困難にする因子)の改善
(5) 局所薬物送達療法 (6) 保存不可能な歯の抜歯
(2) 咬合性外傷に対する処置
(1) 咬合調整と歯冠形態修正 (2) 暫間固定 (3) 歯周治療用装置
(4) 歯冠修復と欠損補綴 (5) プラキシズムの治療 (6) その他の治療
7 炎症に対する処置
(1) プラークコントロール
プラークコントロールは,歯肉炎と歯周炎の主要な原因であるプラークの付着をコントロール(制御)することであり,歯周治療の中でももっとも重要で基礎となるものである。プラークコントロールが不十分であれば,どのような複雑な治療(歯周外科や固定など)を行ってもその効果は著しく低下し,歯周治療は失敗に帰してしまう。すなわち歯周治療の成否はプラークコントロールによって大きく左右きれ,歯周治療の開始時からメインテナンスまで常に指導し管理する必要があり,歯科医師と歯科衛生士および患者とが協力して行う必要がある。
プラークコントロールには,患者が自分で行うセルフコントロールと術者が来院時に行うプロフェッショナルコントロールとがある。両者とも大切であるが,疾患の特性に加えて現在の食生活ではプラークが付着しやすいことから,まず第一に患者自身が毎日口腔清掃を十分に行い,プラークコントロールすることが重要である。その上で患者がプラークを除去しにくい部位や除去でさないところ(ポケット内部など)があれば,術者が清掃したり清掃しやすくする。
(a)患者が(自分で)行うプラークコントロール(口腔清掃指導)
患者が行うプラークコントロールには,プラークを歯ブラシ等で取り除く物理的方法と薬物を用いて取り除く化学的方法とがある。化学的方法は殺菌消毒剤などを用いるため長期間行うと副作用が発現する危険性があり,手術直後など物理的方法が十分行えない場合に補助的に使用する。したがって,通常は歯ブラシ(歯間ブラシやデンクルフロスを含む)など清掃用具を用いた物理的方法が基本となる。さらに,プラークが増加しやすい軟らかく砂糖の多い食物を減らし,自浄作用の高い繊維性食物を取るように指導することも含まれる。いずれの方法を用いるにせよ,プラークコントロールを成功させるためには,患者教育,口腔清掃指導を行うことが必要であり,患者にプラークコントロールの重要性を認識させ,患者が自分から実行しようとする気持ちを持たせること(モチベーション)と,患者に適した具体的な清掃法を指導すること(テクニック指導)が必要である。
(b)モチベーション(動機づけ)
モチベーションはプラークコントロールを成功させる上で,欠かすことができない重要な事項である。患者との信頼関係の確立につとめ,口腔の健康の重要性を認識させ,プラークコントロールが口腔の健康を回復し,維持していくために不可欠であることを自覚させる。このためには検査の結果をもとに患者に口腔内の現状(病状)を知らせ,プラークと歯周病との関係についてわかりやすく説明することや,プラーク染め出し,プラークチャートの記入,口腔内カラー写真,再評価などによる歯周ポケットの変化などを示すことにより,プラークコントロールの効果を自覚させることが大切である。
モチベーションはくり返し行うことが必要であり,さらに時間の経過とともに効果が低下するので,定期的に強化することが大切である。
(c)テクニック指導
テクニック指導はモチベーションと同様くり返し行う必要があり,両者を 適切に組み合わせることが大切である。患者の口腔内の状態(例えば歯列の大きさ,歯肉の状態)と患者の技術的な習熱度を考慮して適切な歯ブラシを 選び,効果の高いブラッシング法を指導することが基本である。
このためには術者が各種のブラッシング法の特徴を十分に理解しておき,患者の口腔内の状態,清掃しにくい部位,現在まで行ってきたブラッシング法,欠損や補綴物の種類や形態など考慮して適切と考えられる清掃用具(歯間ブラシやデンクルフロスや電動歯ブラシなどを含む)を用いて各部位に適した方法を指導する。指導は段階的に行い,患者の清掃レベルに応じて変化させる。とくに指導による効果(プラークチャートの変化や歯肉の改善状態)を観察評価することにより,より適切な清掃方法を取り入れ,レベルアップをはかることが大切である。
歯周病が中程度以上に進行したり,欠損がある患者では歯間ブラシやデンタルフロスを中心とした歯間部清掃用具の使用はきわめて重要であり,その適切な使用法の指導に力を注ぐ必要がある。
(d)術者が行うプラークコントロール
患者が自分自身で行うプラークコントロールにできるだけの努力を払うことが基本であるが,口腔内の状態やブラッシングの技術的な面でどうしても清掃不十分な部位(深いポケット内部など)が残存することがある。このような場合には,来院時に口腔清掃法の再指導とともに術者が歯面や補綴物に付着したプラークの除去を行う。
なお,広い意味では患者が清掃しにくい部位を清掃しやすい状態に改善することもプラークコントロールに含まれる。すなわち,患者と術者が協力してプラークコントロールを十分に行うことは,重要な歯周基本治療の1つである。
# これがいわばPMTCかな。
(2)スケーリング,スケーリング・ルートプレーニング
スケーリングおよびスケーリング・ルートプレーニングは,歯周治療の中でもプラークコントロールとともにさわめて重要な処置であり,歯周基本治療としては無論のこと,その後にも必要に応じて適時に行う必要がある。
スケーリングは,歯に付着したプラーク,歯石,その他の沈着物を機械的に除去することであり,スケーリング・ルートプレーニングは,スケーリングに加えて,ポケットに面する根表面の租造で細菌やその代謝産物を含む病的なセメント質を除去し,生物学的に為害性のない滑沢な根面にすることである。
(a)スケーリングの意義と目的
歯周治療では歯周組織に炎症を引き起こす原因であるプラークを除去することが最も重要であり,それには局所のプラーク付着促進因子である歯石を取り除く必要がある。歯石は歯面に付着したプラークが石灰化したものであり,その表面は租造でプラークがさらに付着しやすい構造となっている。スケーリングの目的はこのプラークが付着しやすい因子を取り除き,患者自身がプラークを取り除きやすくすることである。
(b)スケーリング・ルートプレーニングの意義と目的
ポケット内に露出した根面にはプラークや歯石が付着し,その一部はセメント質の中に入り込んでいることが多く,歯肉の炎症を取り除いたり,歯周組織の再付着を期待する場合には,これらのセメント質を取り除き,歯肉に対して為害性のない根面にする必要がある。
スケーリング・ルートプレーニングの目的は,歯面に付着した歯石などを除去した後,ポケットに面する根面の汚染セメント質を除去すること。また,根面を滑沢にしてプラークの付着を少なくするとともに,根面からプラークを除去しやすくし,歯肉に対して為害性のない根面にすることである。
スケーリング・ルートプレーニングは,歯肉縁下すなわちポケットに面した根面に対して行うものであり,ポケットが深くなるにつれて操作は複雑となり,適切な技術および時間と労力を必要とする。
(c)スケーリング,スケーリング・ルートプレーニング時の注意事項
観血的処置となるので,全身的既往,疼痛に対する処置,充分な滅菌・消毒,感染防止が必要である。
(d)シャープニングの重要性
スケーラーが十分研磨され鋭利であることは,スケーリングとスケーリング・ルートプレーニングを成功させる上で必要条件である。研磨されていないスケーラーは歯石の除去が困難であり,また粗造な根面を触知し難く,能率は極めて悪い。
(e)超音波スケーラー
超音波を利用して歯石を除去するスケーラーである。充分なウォータースプレーの下,フェザークツチで常に往復運動させながら歯石を除去する。一般に歯肉縁上のスケーリングに有効で短時間に効果的に行うことがでさる。
さらに最近はスケーラーのチップの改善により,歯肉縁下のスケーリングも行うことが可能となっている。
(f)
スケーリング,スケーリング・ルートプレーニング後の知覚過敏症について
根面に沈着した歯石や沈着物を除去すると,一過性に冷熱反応が生じる場合があるので注意が必要になる。
(3) 歯周ポケット掻爬(盲嚢掻爬)
歯周ポケット掻爬(盲嚢掻爬)はポケットに面する根面のプラークと歯石を除去した後,さらに汚染している根表面を除去するとともに,歯周ポケット内壁の上皮と炎症性結合組織の部分を掻爬し,歯周組織の炎症を改善し,ポケットを浅くする処置である。
(4)局所の修飾因子(プラークの除去を困難にする因子)の改善
プラークの除去を困難にする因子(プラークリテンションファクター)としては,歯石などのほかに様々なものがある。また,歯周基本治療では直ちに対応でさない歯肉の異常形態,深いポケット,浅い口腔前庭,小帯異常,歯列の不正などもある。
歯周基本治療のなかで対応できるものとしては,歯石の除去,好ましくない食習慣の改善,租造な歯面の研磨,辺縁不適合や形態不良な修復補綴物の調整や再装着,歯頚部付近のう蝕治療,咀嚼を妨げるう蝕や咬合異常の改善などがある。
(5)局所薬物送達療法
歯周ポケット内歯周病原性細菌の増殖を抑制し,さらには細菌叢を質的に健康な状態へ変化させることを目的として行う。しかし,歯根面に付着した歯石や病的セメント質が残存している状態では効果の維持が困難なため,スケーリング,スケーリング・ルートプレーニングなどの物理的手段によってポケット内の改善をはかることが重要である。薬物療法はこれらの療法の補助であり,併用することにより効果が生じる。
全身投与法に比べて,副作用は少ないが,アレルギー既往歴,薬物過敏症など十分診査しておくことが必要である。
(6)保存不可能な歯の抜歯
基本治療の投階で,明らかに保存不可能と判定される重度の歯周炎に罹患した歯は抜歯する。しかし,その歯が咬合関係を維持していたり,治療開始時点で口腔の機能維持に重要な役割を果たしている場合には,当該歯に活動性病変が起きないよう処置を行った上で他の部位の治療を先行させ,咬合関係や機能を維持でさるようになってから抜歯を行う。
保存の可否の判定に迷う歯は,治療の初期の段階では抜歯せず,歯周基本検査2,歯周精密検査2などの後に抜歯の是非を検討することが望ましい。特に,急性炎症を伴う歯の場合には,歯の動揺が歯周組織喪失の程度以上に現れたり,プロービング値が深く測定されやすいなど,判断を誤りやすいので,急性炎症が消退した後に判定する方がよい。
保存の判断に迷う歯に対して歯周治療を行ったり,抜歯予定であるが他の部位の治療が進行するまで保存する場合には,患者に前もって将来抜歯になる可能性を説明しておくと患者の理解を得やすい。歯周治療を受けている患者は,可能な限り歯を保存することを望む場合が多い。基本的には,患者の意志を尊重することを忘れてはならない。たとえ歯科医学的に保有不可能にみえても,インフォームドコンセントが得られていることは抜歯の必須条件である。
# 歯周治療後に抜歯の判断に至る場合もある。
8 咬合性外傷に対する処置
咬合治療は,外傷性咬合を除き口腔全体の咬合の安定を図り,歯周病変を改善し歯周炎により低下した歯周組織の機能を回復することを目的としている。外傷性咬合は歯周炎の初発因子ではないが,歯周炎を進行させる重要な修飾因子である。とくに歯周炎が進行すると,ほとんどの症例は炎症による歯の挺出や移動が生じ,咬合性外傷を合併した状態となるので,咬合治療はさわめて重要な意義がある。
咬合治療には次の治療法が含まれる。
(1) 咬合調整と歯冠形態修正
(2) 暫間固定
(3) 歯周治療用装置
(4) 歯冠修復と欠損補綴
(5) プラキシズム(歯ぎしり)の治療
(6) その他の治療
(1)咬合調整と歯冠形態修正
咬合調整は,歯を削合することにより外傷性咬合とくに早期接触を取り除き,咬合性外傷を治す治療法である。この目的は,歯周組織の咬合性外傷の改善を第一としているが,さらに顎関節症やプラキシズムの改善,歯冠修復後や矯正治療後の咬合の安定化,食片庄入の改善,歯科矯正治療を障害する早期接触の除去も含まれる。
歯冠形態修正は,歯周組織の支持力が低下し早期接触を除いても生理的な咬合力が咬合性外傷(2次性咬合性外傷)を引き起こす場合に,歯冠を削合して咬合力の負担量を軽減し,2次性咬合性外傷を改善する治療法である。これは早期接触が存在しなくても行うが,咬咳嵌合位の接触部は必ず保存し,側方庄のかかる部分や広い面接触の部分を削合して,咬合力を軽減する。
しかし,一度削合した歯はもとの形態に回復することが困難であるから,咬合状態を検査して患者に説明し,了解を得た後適切な削合を行う必要がある。また炎症のある歯は炎症の改善とともに正常な位置にもどる傾向があるので,炎症のある状態(ポケットのある歯を含む)で精密な咬合調整を行っても効果が少ない。したがって,炎症がある時には高度の早期接触のみ調整し,炎症が消退した後に精密な調整を行う。
(2)暫間固定
暫間固定は咬合性外傷を咬合調整のみでは解消できない場合,歯の動揺が強くみられる場合,歯周組織が破壊されて2次性咬合性外傷を生じやすい場合に行う。
暫間固定は当該歯を周囲の歯と連結することにより,歯周組織に対する咬合圧の分散と安静をはかり,咬合性外傷を改善したり,破壊的応力を避けるために行う。暫間固定は一定期間固定を行って歯周組織の変化を観察する目的で行う。
暫間固定を行う上での注意事項
(1)術前および術後に咬合調整を十分に行う。
(2)定期的観察が必要である。とくにプラークコントロール,早期接触の有無に注意する。
(3)暫間固定装置により局所の口腔清掃が阻害されないようにする。
(4)定期的な管理が必要である。
(3)歯周治療用装置
歯周治療中,欠損歯が存在する症例や抜歯や不良補綴物の除去を行った症例には,とりあえず機能と審美性を回復するために,暫間的な補綴処置を行うことが必要な場合がある。これらの装置は,歯周治療中の咀嚼障害,審美障害を改善したり,残存歯への咬合力の負担を軽減する目的で作製され,歯周治療用装置と呼ばれ,とくに長期の治療期間が予測される患者については歯周治療を進める上で重要である。
歯周治療用装置の作製時の注意事項
(1)口腔清掃状態が良好に維持できるような形態に設計する。
(2)治療用装置を装着している間に,再発の危険のある部位を十分に把握し,最終補綴の設計に反映させる。
(3)装着後には定期的に装置の調整,リベース,口腔清掃指導などを行う。
(4)歯冠修復物は歯肉縁上マージンが歯周管理上望ましい。さらに歯冠の過豊隆を避け,歯間ブラシが使用できるよう歯間空隙の形態に注意する。
(4) 歯冠修復と欠損補綴
歯冠修復と欠損補綴は,歯周病により失われた機能や審美性を回復するうえで重要な役割をする。とくに進行した歯周炎や欠損歯が多い症例では,永久固定や広範囲にわたる補綴物あるいは歯肉エピテーゼなどを必要とする場合もある。これらの処置を行う場合に大切なことは,歯周基本治療をしっかり行い,補綴物の清掃性を良くし,支台歯や鉤歯あるいは他の残根歯に,歯周病を引き起こしたり進行させることがないようにすることである。とくに炎症と岐合性外傷とが合併して歯周炎が急速に進行することがないように,歯冠修復や欠損補綴を行う前および行った後に,歯周組織の管理を十分に行う必要がある。
(5) ブラキシズム(歯ぎしり)の治療
プラキシズムは,上下の歯の間に食物がない状態で無意識に行われ,強い咬合力が歯に加わるため,歯周組織に咬合性外傷を引き起こす危険性がある。歯周組織の炎症とプラキシズムによる咬合性外傷が合併すると,重度の歯周炎に発展しやすい。
治療の基本は,プラキシズムの原因と考えられる局所因子(早期接触などの咬合接触の異常)と全身因子(精神的ストレスなど)を取り除くことが基本となる。しかし,プラキシズムの原因や成り立ちは十分に解明されておらず個人差も大きく,治療が難しいのが現状である。そこでまず原因となる早期接触部のみを削合する小範囲の咬合調整,床副子(歯ぎしりに対する咬合床,バイトガード,ナイトガード,オクルーザルスプリント)の装着を行って経過を観察する。最初から広範囲な咬合調整やオーラルリハビリテーションなどの不可逆的な治療を行うことは避けるべきである。
(6) その他の治療
歯の位置異常を修正する歯科矯正治療は,歯周治療の効果を高める。歯列不正による咬合性外傷が明らかな場合や,歯の位置異常によってプラークコントロールが阻害されている場合,適応と言える。しかし,歯科矯正治療が困難な歯列不正もあり,適応症を選んで行う必要がある。なお,歯科矯正治療は保険診療の適用外である。
9 歯周病の指導管理
歯周病の指導管理は,歯周病患者に歯周病の治療およびメインテナンスを成功きせるために必要なプラークコントロールを中心とした日常生活上の指導を行い,歯周組織の健康を回復し維持できるよう管理することである。
歯周治療は,長期間に及ぶ患者自身によるプラークコントロールを基本としている。モチベーションの効果は時間とともに低下するほか,歯肉の退縮や形態の異常さらには補綴物の装着などにより,口腔内の状況は刻々変化する。このため健康な人に比ベプラークコントロールを常に良好に保つことは難しく、ややもすると再び口腔清掃状態が悪化する。これによってプラークが多量に付着し治療効果は失われ,逆に悪化進行してしまう危険性がある。このため歯周病患者に対しては,口腔清掃指導を中心とした指導管理がきわめて重要であり,患者との信頼関係の確立につとめながら定期的かつ長期にわたり行う必要がある。 指導管理を行う上で重要なことは,まず歯周病に対する正しい知識を持たせ(歯周病はどのような病気であり,その主な原因は何かなどを認識させる),患者自身の病状(進行状態)を説明し情報を提供することである。さらに必要とする治療内容と予後を説明し,治療に同意してもらい,協力を得ることがきわめて大切である。とくにプラークコントロールの重安性を認識させ,ブラッシング法を中心に患者が自分で行うプラークコントロール法を指導し,管理していくことは欠かすことができない。また,治療の進行に応じておきる歯肉や歯の変化を十分説明し,その対応についても適宜説明する必妥がある。このほかプラキシズム、舌習癖,口呼吸,喫煙などの増悪因子に対する指導管理や食生活面での指導も大切である。
なお,糖尿病などの全身疾患や薬物の服用など全身性修飾因子を持っている場合は,それらの因子と歯周病との関係について十分説明し、全身性因子の無い人ょりもさらにレベルの高いプラークコントロールを行う必要性があることを理解してもらい,徹底したプラークコントロールが行えるよう指導管理することが必要である。また,全身状態こついても理解を深め,全身と歯周組織との因果関係について適切なアドバイスを行う必要がある。
10 歯周外科手術
歯周基本治療を行っても歯周ポケットが残存している場合には,外科手術によって歯周ポケットの除去が必要な場合がある。歯周外科手術を行うには,十分なプラークコントロールが行われ,しかも術後も継続的に行われることが大切である。プラークコントロールが不十分な場合は,歯周外科手術を行うべきではない。
a 歯周外科手術の前に歯周基本治療を十分行い,歯周精密検査2により,再評価し,歯周外科手術適応症であり,しかも外科処置を行うに適切な時期で あることを確認することが大切である。
b 患者の全身状態に留意する。
c 手術の目的やおこり得る手術後の経過を説明し,患者の同意を得る。
(1) 歯周ポケット掻爬術
この手術は,歯周ポケット内壁の炎症病巣とプラーク付着、歯石沈着している根面を徹底的に掻爬,除去し,根面の滑沢化により歯面と歯肉壁面間とに新しい付着をはかり,ポケットを除去させる。歯面と歯肉の適合が十分でなければ縫合やパックを行う。また,ポケットの除去が困難と思われる深いポケットの場合であっても,ポケット底部の炎症を軽減させ,病変がさらに根尖方向に進行するのを防ぎ,病状の安定をはかる目的でも行われる。
この手術法は患者に対し外科的侵襲が少ないので,高齢者や合併症を有する症例にも適応可能である。しかし,高度の熟練が要求されるとともに,ポケット除去効果が不確実である欠点を有している。
(2) 新付着手術
この手術は,メスを用いたポケット掻爬術の一種である。すなわち,歯肉辺縁からポケット底へ向けて,メスを用いることによってポケット上皮および炎症性結合組織を切除する。ついで汚染された根面の歯石を除去し,スケーリング・ルートプレーニングで滑沢にする。歯根と歯肉は緊密に接触するように縫合し新付着をはかる方法である。この手術は,フラップ手術に比べて外科的侵襲が少なく,歯肉の退縮が少ない。また麻酔薬使用量が少なく,手術時間が短縮できる。しかし,歯肉弁を剥離しないために汚染根面の徹底した除去が困難であり,骨縁下ポケットの掻爬が困難である。
(3) 歯肉切除手術
この手術は,歯周ポケットの減少や除去を目的として歯肉組織の切除を行う方法である。治癒後の予測がたてやすく,手術が簡単でしかもポケットの除去が確実である。しかし,付着歯肉の喪失,術後の歯頚部部知覚過敏症,歯肉退縮などの審美性の問題など術後の臨床上の問題点を有している。
(4) 歯肉剥離掻爬手術(フラップ手術)
この手術は,歯肉弁を剥離して直視下で根面のスケーリング・ルートプレーニングを行うとともに内縁上皮と炎症性肉芽組織を除去し,さらに必要に応じて歯肉や骨の形態を整え,歯肉弁を適切な位置に復位させ縫合し,再付着をはかる方法である。この手術は,垂直性骨吸収で骨縁下ポケットが存在している症例,歯槽骨の形態が異常で骨整形または骨切除が必要な症例,根分岐部病変の症例など適応範囲が広い。しかし,各ステップとも精度の高い技術と熟練が要求される。
(5) フラップ手術に付加して行う手術
(a)歯槽骨整形術,歯槽骨切除術
フラップ手術がポケットの除去を主目的とするのに対し,この手術により積極的に骨形態の改善をはかるものである。この手術は,歯周の局所においてプラークコントロールを容易とする環境を整える。しかし,アタッチメントロスや歯槽骨の喪失を生じる危険性がある。
(b)骨および人工骨移植術
この手術は,骨欠損部(とくに垂直性骨欠損)に通常のフラップ手術を行って病変を除去した後,種々の移植材を移植し骨の再生をはかる方法である。
種々の移植材が報告されており,各々の特徴を理解して用いる必要がある。
(6) 歯肉歯槽粘膜形成術
歯肉歯槽粘膜部の形態異常に対して,これを外科的手術によって改善し,歯周病の再発防止,プラークコントロールのしやすい口腔内環境を確保するための手術の総称名である。
(a)小帯切除術
異常に発達した小帯を切除するとともに付着歯肉の幅を増加させるものである。この手術を行うことによってプラークコントロールが十分に行える口腔内環境をつくる。また,症例によっては義歯の安定を得ることが可能となる。
(b)歯肉弁側方移動術
歯肉退縮で根根の露出している部位に隣接歯の辺縁歯肉から側方に歯肉弁を移動させて露出根面を修復する方法である。少数歯のみが孤立して根面が露出している歯に用いられる。
(c)遊離歯肉移植術
供給側より採取した移植片を,付着させる受容側へ移植するものである。
この手術は,粘膜面への移植は比較的容易であるが,セメント質が露出している歯根面に対しての移植は困難である。
(d)歯肉弁根尖側移動術
付着歯肉の幅が狭い場合,または歯周病で深いポケットが存在し,歯肉歯槽粘膜境を越えているような場合,付着歯肉の幅の増加及びポケットの除去を行う処置である。
(e)歯肉弁歯冠側移動術
歯根面を被覆する方法として用いられ,歯冠側へ歯肉弁を移動させ露出した根面を被覆する処置である。
(f)口腔前庭拡張術
頬舌側の口腔前庭が浅いために,十分なプラークコントロールが行えない場合や補綴修復物を装着するのに付着歯肉の幅のない場合などに行う。
(7) 歯周組織再生誘導法(GTR,GuidedTissueRegeneration)
GTRは保護膜(非吸収性や吸収性)を用いて,上皮や歯肉結合組織の根尖側方向への移動を阻止し,歯根膜由来の細胞を歯冠側の根面に誘導し「結合組織性付着」を得る方法である。この手術は,1,2度の根分岐部病変や垂直性骨欠損(2,3壁性骨欠損)などが適応症である。なお,GTRは高度先進医療である。
11 根分岐部病変の治療
根分岐部病変とは,上顎では大臼歯や小臼歯,下顎では大臼歯の複根歯の根間中隔の歯周組織が破壊される病変である。
根分岐部病変は辺縁歯周組織からの炎症の波及,外傷性咬合,歯内一歯周病変によって生じる。原因や程度あるいは罹患歯の状態によって予後や処置法は様々であるが,辺縁から波及した歯周病変によるものは,その他のものと比べて治療法は複雑であり,予後が一般に不良である。
検査で留意すべきことは,原因の確定と病変の広がりであり,精密なプロービングが欠かせない。X線写真による検査も,場合によっては偏心撮影や造影性を有するものを挿入しての撮影も行われる。病変の進行を促進するエナメルプロジェクションや歯根面の陥凹などにも留意する。
治療方針の決定の際には,ポケットの除去とともに患者がメインテナンス出来るような形態に出来るか,適切な補綴処置が行えるかなどを慎重に考慮する。
治療としては,歯周基本治療や歯周ポケット掻爬術さらには薬物送達療法などを駆使して対応する場合と歯周外科手術を行う場合とがある。後者にはさらに歯根を保存するものと一部の歯根を切断または切除するものとがある。
いずれにしても,綿密な管理が重要である。
12 歯周病患者の補綴処置
口腔機能の回復は,歯周組絶の健康の回復とともに,歯周治療の大きな目標の一つであり,歯周病患者の補綴処置(歯冠修復や欠損補綴)は,歯周治療の一環として極めて重要である。とくに歯周炎が重度に進行した症例や欠損歯の多い症例では,これらの処置が歯周治療全体の予後を大さく左右する重要な役割を持っている。
歯周病患者の補綴処置を行う場合に,まず考えなければならない基本は,補綴処置により支台歯や他の残存歯に歯周病を引き起こしたり進行させることなく,口腔機能や審美性を回復させることである。不注意に歯周病患者に補綴処置を行うと,支台歯や他の残存歯の歯周組織に炎症が誘発されたり増悪したり咬合性外傷が生じたりする危険性がある。
補綴処置を行うことにより,支台歯や鉤歯は咬合力の負担が増加し,咬合性外傷が生じやすい。したがって,支台歯や鉤歯の歯周組織に炎症(深いポケットなど)があると,炎症と咬合性外傷とが合併して歯周組織の破壊が急速に進行してしまう危険性が高い。このような状態を防ぐためには,歯周基本治療を十分に行うことが大切であり,さらに必要に応じて歯周外科手術などを行って深いポケットなど歯周組織の炎症をできるかぎり改善し,支台歯の咬合力の負担能力を高め,清掃性の良い補綴物を作製することが重要である。
しかし,すべての歯をこのような理想的状態にするのは困難であり,一部にポケットが残存するなど問題を残したまま補綴処置を行わざるを得ない場合もある。このような場合は,補綴処置後の継続した歯周治療やメインテナンスが極めて重要となる。
早期に機能や審美性の回復が必要な場合,永久固定を必要とするかどうか判定が難しい場合,保存か抜歯か迷う場合,ヘミセクションなど根分岐部病変の治療法の決定が難しい場合などには,歯周治療用装置や暫間固定装置などを用いてとりあえず機能や審美性の回復を行う。この間にさらに複雑な歯周治療を進め再評価を行って歯周病患者に適した最終的な補綴物を作製する場合もある。
13 高齢者と有病者の歯周治療
(1) 高齢者の歯周治療
高齢者における個体差は極めて大きいが,一般に心肺機能,免疫機能,修復能力は低下しており,心理的な側面も壮年者と比べて大きな違いがある。食生活は高齢者にとって極めて大きな問題であり,高齢者にこそ心のこもった質の高い歯科医療が求められる。
高齢者に対する歯科医療は,高齢になる前の歯科医療の質がどうであったかによって強く影響されることが知られている。つまり,高齢になる前に質の高い歯科医療がされていると,より健康な口腔への期待も大きい。このように高齢者歯科の課題は,突如として高齢者から始まるものではない。この点で生涯を通じての歯科医療の必要性がもっとも象徴的に現れるところであろう。
高齢者に対する歯周治療は,高齢者の一般的な特性,患者の心と全身的な状態,手指の機能の程度などを勘案し,最も適した治療を進めるべきである。70歳代でも歯槽骨の再生が起きることもまれではない。
患者がフラップ手術など侵襲の強い歯周治療に耐えられないと判断したときには,プラークコントロール,スケーリング,スケーリング・ルートプレーニング,歯周ポケット掻爬(盲嚢掻爬)などを中心とした歯周基本治療を行い,必要に応じてくり返し病変が進行しない状態で維持させる。高齢者には電動歯ブラシの使用も有効である。
(2) 有病者の歯周治療
いわゆる有病者,すなわち高血圧,脳梗塞,心疾患,糖尿病などを有する患者は高齢者と同様に歯周外科手術が重大な侵襲となることがある。その場合には医科の主治医と事前に十分に相談し,万全の医療体制を整えておくことが重要である。また,一般に治療時間を短くしなければならないことが多い。例えば,歯周膿瘍の頻発が予想されるような歯は,無理に保存して治療期間を長びかせるべきではない。すなわち,歯周治療によるメリットとそれに伴うリスクとを比較検討し,治療の有用性を判断しなければならない。このことは結局有病者の歯周治療を回避することなく行うことが大切であることを意味している。ときには歯周病が改善するのに伴い,全身状態も改善する症例がある。
(3) 在宅医療と歯周治療
いわゆる在宅の寝たきり老人の大半は,脳梗塞や心疾患など機能障害を伴う患者である。長期間寝たきりの状態になると,関節の拘縮,筋の萎縮や痴呆などが起こり,思考力や連動能力が著しく低下する。そのため,口腔内の健康を維持する上で最も重要なブラッシングが十分に行えず,口腔内は不潔になりやすく,う蝕や歯周病が進行し重症化しやすい。その結果,歯痛や歯冠崩壊,歯周膿瘍など口腔疾患に悩み,摂食が障害されることが多い。また寝たきりになると通院は極めて難しく,在宅医療を受けることになる。したがって,在宅医療ではう蝕と歯周病の予防と治療に留意し,行いうる範囲でプラークコントロールとスケーリング・ルートプレーニングなどを行う。
しかし,重要なのは歯科医師自ら,あるいは歯科医師の指示のもと歯科衛生士が適切な口腔清掃指導を行うことである。本人が口腔清掃に対する理解や実施が困難な場合には,介護者に患者の歯周組織の状態をよく説明し指導を行う。しかしながら,介護者にすべてを任せることは望ましくなく,ブラッシングをリハビリテーションの一環と考え,可能な限り患者自身に実践させることが望ましい。
これに際して,患者が手指の障害のため歯ブラシをうまく握れないときには,患者が使用しやすいように柄の部分の形態を工夫したり,電動歯ブラシを使用する方法がある。いずれにしても,在宅医療における歯周治療をより効果的に行うためには,歯科医師,医師,保健婦,歯科衛生士,患者,介護者の連携が不可欠である。
14 メインテナンスと治癒判定後の再発予防
(1) メインテナンス
メインテナンスとは,歯周精密検査3の結果病状安定と判定された場合に,病状の安定を維持するための定期的な治療である。症状や患者の口腔清掃状態で異なるが、一般的には3カ月ごとのリコール来院が望まれている。ただし,患者の口腔衛生状態や病状によってリコールの間隔は適宜増減する。例えば,最初は1カ月ごとに来院させ,その後は病状に応じて3カ月,さらに6カ月となることもある。
メインテナンス時の検査は,歯周基本検査または歯周精密検査に準ずるものとする。メインテナンス時の治療は検査の結果をもとに必要な処置を決めて行う。プラークコントロールの強化,スケーリング,スケーリング・ルートプレーニング,歯周ポケット掻爬(盲嚢掻爬)などのほか,場合によって歯周ポケット掻爬術など歯周外科手術を行うこともある。また,補綴物の調整が必要となる場合もある。
(2) 治癒判定後の再発防止
歯周病は再発しやすい疾患であり,治癒判定後の再発防止を徹底することが大切である。歯周病はプラークを直接的な原因因子とする炎症性疾患であり,歯周治療により得られた治癒すなわち歯周組織の健康を保持,再発を防ぐためには患者が健康管理を行うことが大切である。このことはとりも直さず口腔衛生指導を徹底し,患者自身が毎日プラークを除去することが最も重要である。歯科医師は歯周治療が終了し,歯周病が治癒と判定した時に再び歯周病の原因について患者に十分説明し,プラークコントロールにおけるセルフケアの重要性を理解させ,毎日実行するよう十分にモチベーションを行う必要がある。