医療情報ネットワーク基盤検討会最終報告の要点

 

最終更新日 2007/08/25

医療情報ネットワーク基盤検討会最終報告 平成16年9月30日 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/09/s0930-10a.html

(1) 平成11年4月より、医師法及び歯科医師法に規定する診療録、医療法に規定する診療に関する諸記録等については、一定の要件(真正性、見読性、保存性の3基準)を各医療施設の責任において担保したうえで、電子的に作成して電子媒体で保存することが容認されている。しかしながら、診断書、処方せん、出生証明書等、法令の定めにより医師、歯科医師等の署名または記名押印が必要なものについては、電子化された文書としての交付、運用、保存は認められていない

(2) 情報技術による医療施設間のネットワーク化を促進すべき理由として、医療にかかわる数多くの機関が、相互に情報交換可能な環境下で電子化を進め、個人情報保護を担保しながら必要な情報の授受が行われることにより、国民と医療に関連する施設にとって分かりやすいメリットがもたらされることが掲げられた。例えば、国民にとっては、他の医療施設へ紹介される際の負担が軽減したり、自宅から自分の電子カルテを安全に閲覧することが可能となったり、医療施設にとっては、自施設の患者の診断治療等に関する助言を他施設の専門医等から円滑に得ることが可能となるといったメリットが考えられる。

(3) また、国民と医療施設の双方に関連するメリットとしては、投薬や検査の不要な重複を防止したり、体質等により投与してはいけない薬の情報を共有したり、円滑に外来受診や入院の予約を行うことなどがあり、安全性、患者サービスの質、利便性等が向上するものと期待される。さらに、今後の医療の情報化の発展に伴い、国民の理解を前提として、医療情報の収集・整備と臨床研究等への利用が可能となり、医学・医療の向上に寄与することが期待されるなど、社会全体としてのメリットがもたらされることが考えられる。

(4) 一方、こうしたメリットの反面、多くの施設をつなぐ医療情報のネットワーク化は、大量の個人情報が瞬時に流出して悪用されることへの心配等、国民の不安を招く要素もあり、プライバシー保護や情報セキュリティに係る十分な対応策を講じるとともに、これらの対応策について国民に分かりやすく説明し、国民が安心感を持てるようにしていく必要性が強調された。

(5) 医療の公的資格保有の確認を効果的かつ効率的に実施するためには、免許(国家資格)に関する電子化された台帳(電子化された医籍登録情報データベースなど)の整備は将来的には不可欠となるものと考えられ、並行して準備を進める必要がある。なお、免許取得時の台帳への電子的な登録と同時に、取得者本人に対して、ICカードに格納する等により秘密鍵付きの電子証明書を発行することも考慮されるべきである。

(6) 現在までに電子的な交付、運用、保存等が認められていない文書について、電子化することにより医療の質的向上、効率化、利便性の向上等の効果が期待され、かつ、わが国の医療制度運用の実情等に照らし合わせて、電子化による負の影響が克服可能なものについては、個々の文書について必要な要件を明らかにしつつ電子化を進めるべきである。

(7) 医療の実施に際して作成される文書のうち、放射線の照射録、臨床修練外国医師の診療録、及び様々な制度の下に交付・運用される診断書等は、医師または歯科医師の署名または記名押印を受けなければならないため、現在、電子的な作成が認められていない。電子署名法が施行されている現状においては、同法に適合した電子署名がなされることにより、署名または記名押印された文書とみなして電子化を認めてよいと考えられる。

(8) 院外処方せん(以下、処方せん)は、医療関係者にとどまらず、国民生活にもなじみが深い利用頻度の高い書類の一つであるが、医薬品の安全性確保など医薬分業の目的を達成するため、法令上の作成・交付者(医師又は歯科医師)、交付を受ける者(患者またはその看護に当たる者、以下、患者等)、調剤者及び保存義務者(薬局又は病院)が異なる等の制度運用上の特性があり、また、医師又は歯科医師の記名押印又は署名が必要なため、現在、電子的作成が認められていない。

(9) 麻薬、向精神薬等を含め薬剤の調剤の根拠となる処方せんの取り扱いは、国民の健康に直接的な影響を及ぼすものであることから、処方せんの電子化については、交付者である医師又は歯科医師(注3)、処方せんにより調剤を行う薬剤師(注4)の国家資格の認証機能を含む電子署名の実施を前提とすべきである。それに加えて、別紙「法的に保存が義務づけられている医療関係の書類の電子的保存について」で示された制度運用上の各課題をすべて克服し(注5)(注6)(注7)(注8)、薬剤師が処方医に対して処方内容に係る疑義照会を行う場合に円滑に実施できること(注9)、薬局において調剤済み処方せんに薬剤師の署名または記名押印を行い(注10)保存すること等を可能とする必要があるため、現時点においては、処方せん自体を電子的に作成して制度運用することはできない。

 ・ しかしながら、当面、患者等の要望を踏まえて、処方せんに記載されている情報を関係者が電子的に共有すること等を進めながら、医療機関と薬局等が幅広くネットワーク化された状況の実現を図っていくことで、将来的に処方せんの電子的作成と制度運用が可能な環境を整備していくことが望ましい。例えば、患者等が薬局に処方せんを持参する際に、バーコードや電子タグ等の情報媒体を活用することにより、誤処方又は誤調剤を防止し、トレーサビリティを向上できる等の医療安全推進の視点を重視しながら、電子的な情報共有を進めていくことが考えられる。

(10) なお、法令により民間に保存が義務付けられている文書・帳票のうち、電子的保存等が認められていないものについて、近年の情報技術の進展等を踏まえ、原則としてこれらの文書・帳票の電子保存等が可能となるようにする統一的な法律案(通称「e-文書法通則法案」)の今後の国会提出を目指した作業が現在政府全体で進められているが、本検討会としては、当該法律案への対応については、電子保存の対象範囲、容認の要件等を先に取りまとめた別紙「法的に保存が義務づけられている医療関係の書類の電子的保存について(e-文書法通則法案への対応など)」の方向で整理すべきであると考えられる。

(11) なお、本項は保存義務のある診療録等をオンラインで外部に保存する場合の要求事項を述べたものであり、各医療機関の責任の下で、患者等の同意を前提とし個人情報保護法を遵守しつつ、医療機関相互に診療情報の交換及び共有を行うことを妨げるものではない。

■ 法的に保存が義務づけられている医療関係の書類の電子的保存について

. 診療録、処方せん、照射録等のスキャナによる読み取り保存について
 医師法等の規定により、医療機関等において保存が求められている診療録、処方せん、照射録等の書類については、e-文書法通則法案で対応するために、医療機関等における紙による保存の負担軽減を図り、患者サービスの向上を図る観点から、以下の一定の条件を満たす場合に限りスキャナ読み込みによる電子保存を認める。

1. 共通する条件

(1) 診療に支障が生じることのないよう、スキャンによる情報量の低下を防ぎ保存義務のある書類としての必要な情報量を確保するため、光学解像度、センサなどの一定の規格・基準を満たすスキャナを用いること

(2) 改ざんを防止するため、医療機関等の管理者は以下の措置を講じること ・ スキャナによる読み取りに係る運用管理規程を定めること
・ スキャナにより読み取った電子情報と原本との同一性を担保する情報作成管理者を配置すること
・ スキャナで読み取った際は、作業責任者(実施者又は管理者)が電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)に適合した電子署名等を行い、責任を明確にすること
・ スキャナで読み取る際は、タイムスタンプの利用又はシステムの時刻の正確性を確保するための一定の手順に従った運用により、信頼性のある読み取り時刻を明示すること

(3) 診療上緊急に閲覧が必要になったときに迅速に対応できるよう、停電時の補助電源の確保、システムトラブルに備えたミラーサーバーの確保などの必要な体制を構築すること

(4) スキャナにより読み取った情報が、法令等で定められた期間は、適切かつ安全に保存されるよう、ソフトウェア・機器又は媒体の適切な管理を確保すること

(5) 個人情報の保護のため個人情報保護法を踏まえた所要の取り扱いを講じること

(6) 医療機関外部での電子的保存については本検討会における検討を踏まえた今後の必要な条件の整理を待って対応すること

(7) なお、今回整理した条件を全て満たす場合には、e-文書法通則法案が適用され、スキャナで読み込んだ電磁的記録が保存されていることをもって、書面での保存に替えることができるが、これは、医療施設の管理者が、情報の故意又は偶然による改変の懸念に対応するために、スキャナ読み取り後の紙媒体を保存することを妨げるものではない


2. 診療等の都度電子保存する場合の条件

(1) 改ざんを防止するため情報が作成されてから、または情報を入手してから一定期間以内にスキャナによる読み取り作業を行うこと

(2) 情報作成管理者は、上記Iの1の技術的な基準及び個人情報保護に係る要件に基づき実施すること


3. 過去に蓄積された紙媒体等を電子保存する場合の条件

(1) 個人情報を保護する観点から、スキャナによる読み取りを実施する前にあらかじめ対象となる患者又はその看護に当たる者等(以下「患者等」という。)に院内掲示等による情報提供を行うこと。患者等から異議の申し出があった場合は、スキャナによる読み取りを行わないなど必要な配慮を行うこと

(2) 作業における個人情報の適切な保護を図るため、所要の実施計画及び上記運用管理規程の事前作成、スキャナによる読み取り作業終了後の監査などを確保すること
なお、行政機関又は第三者による関与も含めて必要な体制を今後検討する

(3) 外部事業者に委託する場合には、安全管理上、スキャナによる読み取りを医療機関が自ら実施する際に必要な上記Iの1の技術的な基準及び個人情報保護に係る要件を満たす事業者を選定し、契約上も安全管理等に必要なこれらの要件を明記すること


II.電子的な作成と保存

1. 診療録等の電子的な作成・保存現在の技術状況や今後の医療分野における個人情報保護ガイドラインの検討状況等を踏まえつつ、本検討会としても今後更に必要な運用指針を検討する。


2. 処方せんの電子的な作成・保存

1) 電子的に作成された処方せんの電子的な保存を実現するためには、以下の各課題をすべて克服する必要があるが、患者等の利便性の向上や技術的実現可能性などの観点から慎重に検討を進める必要がある。 ・ 医師・歯科医師による無診察診療を防止する必要があること(自ら診察しないままでの処方せんの交付の禁止)
・ 患者等による処方内容の確認を可能とする必要があること
・ 患者等による薬局の自由な選択(フリーアクセス)を保証する必要があること(医療機関、薬局、患者等の全てが電子的な対応の体制が整わない現状で処方せんの電子的な作成・保存を認めた場合、事実上患者の選択が保証されないおそれがある)
・ 処方せんの期限内に病状が変化し当初の処方に従った調剤では不適切な場合があること
・ 処方せんの偽造や再利用を防止する必要があること
・ 対面による薬剤師の服薬指導・情報提供を確保する必要があること

(2) 処方せんの電子的な作成は、現在、医師法上認められていないが、今般のe-文書法通則法案では、作成・保存について異なる法令に規定されている書面や、作成者と保存義務者が異なる書面についても電子的な作成を認める対象とすることとされている。したがって、作成(医師法及び歯科医師法)と保存義務(薬剤師法及び医療法施行規則)が異なる法令に規定され、かつ、作成者(医師又は歯科医師)と保存義務者(薬局又は病院)が異なる処方せんについても、電子的作成の適用対象となり得る。このため、上記(1)を踏まえ、今回処方せんの電子作成を認めないとする場合は、法案の規定等を踏まえて、適用対象外とする措置を講じる必要があると考えられる。


3. 照射録及び臨床修練外国医師の診療録の電子的な作成・保存

(1) 現行法では電子保存が禁止されているため、e-文書法通則法案の適用対象となる。

(2) 電子署名法に適合した電子署名等を行うことにより、現行法上必要な記名押印等がなされたものとみなし、上記IIの1の運用指針と合わせて対応することで電子化を認めることとする。