歯科医師の救急救命処置 |
最終更新日 2007/11/07 |
厚労省の見解 平成14年4月
1 歯科口腔外科疾患で入院している患者が、病棟においてショック状態となり、生命に差し迫った危険が生じていると判断される場合で、それが医科の疾患によるものと考えられる場合においては、医師による対応を求めることが原則とされるべきであるものの、当直中の歯科医が、医師が到着するまでの間に救急救命処置を行うことは、それが人工呼吸等の一般的な範囲のものにとどまる限り差し支えない。
なお、この場合において、気管内挿管や特定の薬剤投与等の高度な救急救命処置を行うことについては、個別の事情に応じて緊急避難として認められる場合があり得る。
2 歯科診療中に患者がショック状態となり、生命に差し迫った危険が生じていると判断される場合で、それが医科の疾患によるものと考えられる場合においては、救急隊等を通じて、医師による対応を求めることが原則とされるべきであるものの、歯科医が、当該患者が救急用自動車で搬出されるまでの間において救急救命処置を行うことは、前記1と同様、それが人工呼吸等の一般的な範囲のものにとどまる限り差し支えない。また、この場合において、気管内挿管や特定の薬剤投与等の高度な救急救命処置を行うことについては、個別の事情に応じて緊急避難として認められる場合があリ得る。
3 歯科診療所待合室で待っている患者がショック状態となり、生命に差し迫った危険が生じていると判断される場合で、それが医科の疾患によるものと考えられる場合においても、前記2と同様である。
なお、この場合において、歯科医が、到着した救急救命士に対して指示することは救急救命士法上想定していないことから、認められない。
また、救急救命士が救急救命処置を行うにあたっては、救急救命センター等の医師の指示を受ける必要がある。
4 一般歯科医が救急救命処置に関するスキルアップをするために医斜において研修することは、それが適法な形で行われる限り、差し支えない。
医政医発第0423002号
医政歯発第0423004号
平成14年4月23日
各都道府県衛生担当部(局)長 殿
厚生労働省医政局医事課長
厚生労働省医政局歯科保健課長
歯科医師による救急救命処置及びそのための研修の取扱いについて
最近、歯科医師による救急救命処置及びそのための研修の取扱いをめぐって疑義が生じているようであるが、これらについての当局の見解は下記のとおりであるので、御了知いただくとともに、管下関係機関に対する周知・指導方よろしくお願いする。
記
1 歯科医師による救急救命処置について
歯科医師が、以下の(1)から(3)までのような状況において、患者の生命に差し迫った危険が生じていると判断される状況に遭遇する場面が生じ得ることは否定できない。
(1)歯科医師が病棟において当直している間に、歯科に属する疾患で入院している患者がショック状態となる場合
(2)歯科に係る診療行為中の患者がショック状態となる場合
(3)歯科診療所の待合室における患者がショック状態となる場合
これらのショック状態が医科の疾患に起因するものと考えられる場合においては、直ちに医師による対応を求める必要があるが、当該歯科医師が、医師が到着するまでの間又は当該患者が救急用自動車で搬出されるまでの間に救急救命処置を行うことは、それが人工呼吸等の一般的な救急救命処置の範囲のものにとどまる限り、医師法に違反するものではない。
また、こうした場合において、気管内挿管や特定の薬剤投与等の高度な救急救命処置を行うことについては、個別の事情に応じ、緊急避難として認められる場合があり得る。
なお、歯科医師が救急救命士に対して指示を行うことは、救急救命士法上想定していないことから認められず、救急救命士が救急救命処置を行うにあたっては、救急救命センター等の医師の指示を受ける必要がある。
2 歯科医師による救急救命処置に関する研修について
歯科医師が、救急救命処置に関する対応能力の向上を図るために医科の診療分野において研修することは、一般的に医師法に違反するものではない。
ただし、当該研修が診療行為を伴う場合においては、診療範囲等に関する法律上の制限が遵守される必要がある。
■ 歯科医師の救命救急研修ガイドラインについて 平成15年9月 厚生労働省
医政医発第0919001号
医政歯発第0919001号
平成15年9月19日
各都道府県衛生主管部(局)長 殿
厚生労働省医政局医事課長
厚生労働省医政局歯科保健課長
歯科医師の救命救急研修ガイドラインについて
歯科医師の救命救急における研修のあり方につきましては、平成14年度の厚生労働科学特別研究事業において検討されてきたところでありますが、この度、本事業により別添のとおり歯科医師の救命救急研修ガイドラインが取りまとめられました。
つきましては、貴職におかれましても、歯科医師の救命救急研修の重要性にかんがみ、本ガイドラインの趣旨を十分御了知の上、貴管内の関係機関に本ガイドラインを周知するなど歯科医師の救命救急研修の充実につき御協力を頂きますようお願いいたします。
なお、本日付けで、社団法人日本医師会、社団法人日本歯科医師会及び日本歯科医学会あてに、本通知の写しを送付いたしましたので、念のため申し添えます。
(別添)
歯科医師の救命救急研修ガイドライン
T. 趣旨
歯科医療の安全性及び質の向上を図るために、歯科医師の救命救急研修は重要であるが、研修といえども医療行為を伴う場合には、法令を遵守しながら適切に実施する必要がある。特に歯科及び歯科口腔外科疾患以外の患者に対する行為では、慎重な取り扱いを期すべきである。
本ガイドラインは、このような観点から、歯科医師の救命救急研修のあり方に関する基準、特に医科救命救急部門における研修のあり方に焦点を当てた基準を定めるものであり、二次救命処置研修と救命救急臨床研修の二段階方式とした。
U. 二次救命処置研修
気管挿管を含む二次救命処置(*ACLS:Advanced Cardiovascular Life
Support) を中心にシミュレーションによるコース研修とし、歯科医師の中でもこれを指 導できる者を養成して実施する。既に卒前教育として取り入れられているシミ ュレーターを使用しての実技指導を、各歯科医師会単位で行われる生涯教育に も積極的に取り入れ、反復研修することによりその知識と技能を維持し、緊急 事態に対応する。
【一般目標】
歯科診療において生命や機能的予後に係わる緊急を要する病態に対して適切な対応ができる。
【到達目標】
1) バイタルサインの把握ができる。
2) 重症度及び緊急度の把握ができる。
3) ショックの診断と治療ができる。
4) 基本的な二次救命処置(ACLS:Advanced Cardiovascular Life Support)ができる。
5) 専門医への適切なコンサルテーションができる。
*ACLS:本研修のACLSとは、別紙1の研修水準がA項目又はB項目の二次救命処置をいう。
V. 救命救急臨床研修
歯科口腔外科や歯科麻酔科等の歯科医師で、より高度の救命救急研修を望む者が受ける臨床における救命救急の研修をいう。歯科医師免許取得者が一定期間の臨床経験を積んだ後に、救命救急センター等の医科救命救急部門で救命救急分野に関連するより高度な研修を受ける。
【一般目標】
歯科診療において、生命や機能的予後に係わる緊急を要する病態に対して適切でより高度な対応ができる。
【到達目標】
歯科医師の救命救急研修水準(別紙1)のA項目とB項目について、研修終了後に評価表(別紙3)のレベルU又はVに到達した項目を合わせて、項目数でA項目80%以上、B項目50%以上となることが望ましい。
【研修実施要項】
1. 設:次の条件を満たす施設であること。
1)1人以上の研修指導医がいること。
2)研修担当管理責任者(病院長又は救命救急センター、救急部等の管理者)を定めていること。
2. 修指導医
1)研修指導医は、原則7年以上(少なくとも5年以上)の臨床経験を有する医師であること。
なお、研修指導医は、次の条件のいずれかを満たす医師であることが望ましい。
a 中間法人日本救急医学会が認定した専門医又は指導医
b 日本集中治療医学会が認定した専門医
c 社団法人日本麻酔科学会が認定した専門医
2)研修指導補助医は、研修指導医を補助する医師をいい、3年以上の臨床経験を有する医師であること。
3. 研修を受ける歯科医師
研修を受ける歯科医師(以下「研修歯科医師」という。)は、次の条件のいずれかを満たす歯科医師であること。
1)歯科の臨床経験を1年以上有し、歯科疾患を対象とした全身麻酔(気管内麻酔20例以上)を経験した者で、Uの二次救命処置研修終了者
2)Uの二次救命処置研修でシミュレーションによるコース研修を終了し、その到達目標の知識と技能を修得した者で、救命救急センター等の研修施
設の研修担当責任者が、救命救急臨床研修を受けることを認めたもの
4. 研修方法
1)研修歯科医師が、歯科及び歯科口腔外科疾患以外の症例に関する医療行為に関与する場合については、別紙1に定める基準に従い、研修指導医又は研修指導補助医が必要な指導・監督を行うことにより、適正を期すこと。
2)研修実施に当たっては、5.に定める事前の知識・技能の評価結果に基づき、必要に応じて別紙1に定める基準よりも厳格な指導・監督を行うな
ど、患者の安全に万全を期すこと。
5. 事前の知識・技能の評価
研修を開始する前に、研修担当管理責任者が研修歯科医師の全身管理、麻酔及び救急処置に関する基本的知識・技能を適切な形で評価し、その結果について別紙2を参考として記録・保存しておくこと。
6. 患者の同意
当該医療機関において、歯科医師が救命救急研修を受けていることを明示し、研修歯科医師が歯科及び歯科口腔外科疾患以外の症例に関する医療行為に関与する場合には、歯科医師であることを患者、患者家族、代諾者等に伝えるとともに、原則としてその同意を得ること。
7. 事後の知識・技能の評価
研修終了後に研修担当管理責任者が研修歯科医師の知識・技能を適切な形で評価し、その結果について別紙3を参考として記録・保存しておくこと。
(別紙1)(別紙2)(別紙3)略